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YMS-02 ユニオンブラスト

ガンダムとの戦いで戦死したハワードとの誓いを守るため、グラハムはあえてフラッグに乗り続けることを選び、相討ちという形ながらもガンダム打倒という宿願を果たします。しかしながら、グラハムがフラッグにこだわったのは、フラッグファイターとしての矜持、亡き部下との誓いだけが理由ではありません。ガンダムの登場により、ロールアウトからわずか数年で旧世代機という烙印を押されてしまうこととなったフラッグ。そのフラッグがユニオンの次期主力機に選ばれる際には、グラハムをテストパイロットとして熾烈なトライアウトが行われました。ライバルとなった機体「YMS-02 ユニオンブラスト」には、恩師であり、孤児であるグラハムにとっては父親にも等しい存在となっていたスレッグ・スレーチャー少佐が搭乗しており、その実力は過去に行われた46回に及ぶ模擬戦において、グラハムが一度として勝利し得たことがないほどでした。しかし試験の最終段階において、フラッグとの模擬戦中の事故によってブラストは墜落し、スレーチャー少佐は死亡。総合評価においてブラストを圧倒していたフラッグは次期主力機として採用されることとなります。グラハムにとってフラッグの栄光は恩師の犠牲の上に成り立ったものであり、たとえ非合理ではあっても容易に投げ出すことはできなかったのです。

「YMS-02 ユニオンブラスト」はユニオンの現行の主力機であるリアルドを開発したベルファクトリー社が、シェアの維持・拡大を狙い送り出した可変MSです。リアルドの後継機でありながら、その変形方式には大きな違いがあり、リアルドと比較すると半分ほどまでに細くなった脚部は、内部フレームを折りたたむことで装甲部分が前進翼を形成するという構造となっています。腕部も機体後方へと格納される形となっており、飛行形態の機体の厚みはリアルド、フラッグと比べても格段に薄く、こと空戦に限ってはフラッグを上回る性能を発揮していたと言われています。しかしながら、そのためにMS形態の性能が大きく犠牲になっており、特に翼となる脚部は、ガンダムとの肉弾戦をもこなしていたフラッグのそれとはほど遠い強度であろうことは明らかです。また、背部ユニットを交換することで容易に宇宙空間に対応し、その頑強なフレームを活かし重装甲を施すことで、陸戦にも特化させることが可能であったフラッグと比較すれば、拡張性の面でもブラストは大きく劣っていたと言えます。

他にも、燃料となる水素を吸蔵するフレーム素材、太陽光発電システムへの対応など、フラッグを開発したエイフマン教授があまりにも革新的であり、生産性やメンテナンスまでをも考慮し、フラッグの機体構造をライバル社の機体である現行主力機リアルドに可能な限り近いものにするというアイリス社の戦略も功を奏したと言えるでしょう。巨額を投じ、ユニオン最高のパイロットを搭乗させるというベルファクトリー社の力技も実を結ぶことなく、ブラストの名はユニオンのMS開発史を飾るだけのものとなったかのように見えます。しかしフラッグとブラストの互いの存在を賭けた戦いの立会人でもあったビリーには、ブラストが秘めた真価が見えていたのかもしれません。のちに彼が開発することとなる擬似太陽炉搭載型MSブレイヴ。その飛行形態には、ブラストの遺伝子が確かに引き継がれているように見えます。誰よりもその機影を目に焼き付けているであろうグラハムであれば、盟友ビリーがブレイヴに何を宿そうとしたのか、すぐに気が付いたはずです。
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