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外宇宙航行艦スメラギ

武力介入によって紛争を根絶させ、争いの火種を抱えたまま人類が外宇宙へと進出することを防ぎ、来るべき異種との対話に備える。それがイオリア・シュヘンベルグがCBを創設した目的です。ELSの来訪によってその順序は大きく前後することとなったものの、数十年の争いの末についに人類は紛争根絶を成し遂げ、ELSという異種とともに外宇宙へと旅立つ日を迎えることとなりました。そのために建造されたのが「外宇宙航行艦スメラギ」です。総勢1200名の乗組員は全員がイノベイターによって構成されており、それはこの外宇宙探査の旅が、数十年、あるいはそれ以上の長きにわたるものと想定されているためです。そのような計画であることから、スメラギも自給自足能力を備えた超大型艦となっており、ELSの花の一片に建設された港に係留されているスメラギの規模は、かつてCBが建造したコロニー型外宇宙航行母艦「ソレスタルビーイング」に匹敵するものと推定されます。本来はその「ソレスタルビーイング」号こそが人類を外宇宙へと導く役割を果たすはずでした。しかし長い戦乱の時代を経て老朽化したことや、ELS来訪後の飛躍的な技術の進歩により、もはや新たに建造した方が合理的であると判断されたのでしょう。あるいは戦略的にも重要な存在であったCB号自体が、紛争のさなかに失われてしまったという可能性も考えられます。

「スメラギ」という名称は、言うまでもなくかつてのCBの指揮官「スメラギ・李・ノリエガ」に因んだものです。アロウズとの戦いの後のCBと地球連邦は、ヴェーダを介した暗黙の協力関係といった様相でした。しかし表向きはCBは依然としてテロ組織として扱われており、それは連邦軍の中には三陣営時代にCBによって直接の被害を受けた軍人も多いためで、地球連邦としてもCBを肯定するかのような態度は安易にとれない情勢であったからです。ブレイクピラー事件の際に姿をさらしたことにより、CBを象徴する人物として世に知られてしまっているスメラギの名が、全人類の記念碑ともいうべき外宇宙航行艦に冠されるということは、2364年においてはCBに対する評価が画期的な変化を遂げているということを物語っています。ELS来訪から十数年後においても、CBは活動を続けていることがわかっています。おそらくそこから遠くない時期に、既存人類とイノベイターの紛争を終結させる上で、CBは決定的な役割を果たしたのでしょう。その業績に対する最大限の敬意の表れが「スメラギ」なのです。
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