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生き残ったサバーニャ

連邦軍は壊滅し、CBもガンダムハルートを失う中、ライルのガンダムサバーニャは最後まで生き残ることを果たしました。その要となったのは多数のライフルビットと、盾であるホルスタービットです。戦闘開始時、サバーニャは14基のホルスタービットを装備し、さらに両手にライフルビットIIを保持していたことから、合計16丁のライフルビットIIを持っていたと考えられます。それらのビットを緻密な計算のもとに交代させ、粒子チャージを繰り返して常に一定数のビットを稼働させていたのでしょう。そして刹那が復帰した戦闘の中盤まで、ビットの総数は減っているようには見えませんでした。これはハロによるビットの制御でELSに取り込まれることを巧みに回避していたためとも考えられますが、火星での戦いではELSは超高速で機動するガデラーザのGNファングさえも捕獲していました。体当たりによる攻撃を主体とするGNファングと比較すると、精密射撃を行うサバーニャのライフルビットIIの挙動は機敏とは言えず、その全てがELSに取り込まれることを回避できていたとは考えにくいところです。

ではサバーニャはどのようにしてその戦闘能力を長時間維持していたのかと言えば、それはおそらくプトレマイオス2からのビットの補充です。戦闘前にスメラギが宣言していた通り、この戦いはCBにとってのラストミッションであり、戦力を出し惜しむ理由はありません。そのため、ELSとの長期戦に備え、搭載できる限りの補給物資がプトレマイオス2へと運び込まれていたものと考えられます。ライフルビットIIの操作可能範囲は同様の兵器の中でも広範囲とされており、プトレマイオス2から射出すれば、容易にサバーニャへ届けることが可能なのです。もっとも、多数のライフルビットIIを効率的に運用できるのは粒子を再チャージするためのホルスタービットがあるからこそで、刹那の道を切り開くためにホルスタービットを全て分離し、接続用のアームを切り離した後のサバーニャの戦いはきわめて困難なものとなりました。ライフルビットIIをチャージする手段は両手に持つ以外になく、また使用しながらのチャージとなるので遅々として進みません。ビットの再チャージは実質的に不可能となり、粒子を失ったビットは次々と機能を停止していくことになります。せめて腰の接続用アームだけでも残しておけば、もう少し長くビットを運用できていたかもしれません。しかしビット接続用アームは大型であり、その存在がライルの「みだれ撃ち」の精度に悪影響を及ぼしては元も子もなく、サバーニャの健在という結果を見る限り、背水の陣を敷いたライルの判断は正しかったのでしょう。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.22

超巨大ELSの中枢へとたどり着き、クアンタムバーストによってELSとの対話を果たした刹那とティエリアは、ELSの真意を知ることとなりました。彼らには人類に対する敵意は無く、未知の文明を知るための手段として融合しようとしていただけだったのです。人類側の攻撃に対してMSや巡洋艦に変貌して反撃していたのも、それが人類のコミュニケーションであると誤解し、挨拶に対して挨拶を返していただけだったわけです。もっともELSにも自らの存在を脅かす外敵という概念はあるはずで、その証拠として巨大GNレーザーによって超巨大ELSが大きな被害を受けた際は、即座に防御の手段を講じています。人類側がELSに対して許容範囲を超えた被害を与えていたならば、ELSは人類を脅威と認識し、全力で攻撃を行っていたことでしょう。その場合、一瞬で連邦軍は消滅していたであろうことは明らかです。

ELSは太陽系とは別の惑星系に存在する木星に似た惑星に発生し、個という概念を持たないままに進化を続け、ついには宇宙へと進出するに至った金属生命体でした。その母星は長い時間の果てにELSによって覆い尽くされ、星そのものがELSというべき状態となります。しかしある時、ELSの母星が属する惑星系の太陽がその寿命を終え、超新星爆発を起こし、ELSの母星は壊滅的な被害を受けることとなりました。絶滅は回避することができたものの、もはや太陽の恩恵を得られなくなったELSは新天地を探さざるをえなくなり、そうして旅立つこととなったのが地球へと現れた超巨大ELSだったのです。ただ、ELSが地球へとやってきたのは種の存続のためだけではないでしょう。彼らの適応能力を以ってすれば、どのような恒星の下であっても新たな母星を築けるはずです。全体で一つの存在であるELSは究極的に孤独な存在であるとも言えます。そんなELSにとって、生存と同等以上に重要であったのは、自らと語り合える対等の存在を見つけることにありました。

宇宙空間に進出するほどの文明を持ち、自らと同じ量子波を発する人類は、彷徨の果てにようやく見つけた友人となりうる可能性を持った存在でした。それだけに、ELSの人類に対する接触も慎重に行われることになります。探査船エウロパに変貌しての斥候を行い、その後に中規模の群れを送り込み人類側の反応を窺っていたことも、その慎重さの表れと言えるでしょう。新たなる母星、対等の存在を求めて銀河を旅する過程で、ELSは生命体が存在する星をいくつも発見していますが、融合という手段で相手を理解しようとした結果、滅ぼしてしまっていました。その経験から、ただ一方的に融合するだけでは知識は得られても相手は消えてしまうだけだということをELSも学んでいたのかもしれません。

ELSに敵意は無く、この戦いは誤解から生じたものあることを理解した刹那は、真に互いを理解して共存を図るべく、ELSの母星へと旅経つことを決断します。ELSの母星は滅亡の淵にはあるものの、いまだELS全体の中枢としての機能を残しており、真の対話を果たすためにはそこへ赴く必要があると刹那は直感したのでしょう。その刹那に対してティエリアは覚悟を問います。ELSの母星の座標はクアンタムバーストによって知ることが出来ました。クアンタの量子テレポートを使えば行くことは可能です。しかし辿りついたELSの母星で行われる対話はELSが真の意味で人類を理解するべくおこなわれるもので、そのためには刹那自身がELSと一つになることが求められることは明らかでした。尋常な人間としての人生、あるいは命そのものを差し出す覚悟をティエリアは問うたわけですが、刹那の答えは「良いも悪いも無い」「ただ俺には、生きている意味があった」というものでした。

幼少期、サーシェスによってマインドコントロールされた結果とはいえ、自らの手で両親を殺害したときから刹那は自らの命に意味を見出すことが出来なくなっていました。ガンダムマイスターとなって世界の歪みを正すという使命でさえも、生き永らえる理由としては不十分であったのでしょう。思えばかつて刹那はニールに銃を突き付けられた際にも、他の誰かが目的を果たしてくれるのならば自らはここで死んでも構わないという諦観を見せていました。生きるに値しない自分が未だ生き続けている理由は何なのか。これまでの刹那の戦いの日々は、それを探し求めるためのものであったのかもしれません。
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