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人類の4割がイノベイターに

西暦2364年、紛争の根絶を実現した人類は巨大な外宇宙航行艦「スメラギ」を建造し、外宇宙の探査へと乗り出すことになりました。その出発を報じるニュース映像の中で、すでに全人類の4割までもがイノベイターに置き換わっているという事実が語られています。50年前の時点では出現が確認され始めている、といった状況だったイノベイター。イノベイターの子孫は必ずイノベイターとして生まれるのだとしても、元が少数である以上、わずか半世紀で数十億人にまで増加した理由としては不十分です。イノベイターが急速に増加することとなった最大の要因。それはELS来訪後に始まった紛争にあります。イノベイターの存在とその驚くべき能力が一般的に認知されるようになると、劣等感を刺激された既存人類の一部はイノベイターを人類を脅かす異種とみなし、排斥しようという動きを起こすこととなります。地球連邦軍を分裂させ、十数年の長きに及ぶこととなった人類にとっての最後の大紛争。それを終息に至らしめたのは軍事力による勝利ではありませんでした。

人類を二分したこの紛争に対してもCBは武力介入を行い続けました。そして数多くの戦場でトランザムバーストを行ったものと思われます。イノベイター排斥の紛争が勃発すること、そしてその紛争に対する最も効果的な対処法がトランザムバーストであることは、スメラギならば事前に予測していたはずです。あるいは紛争が顕在化する前の時点ですでに準備を始めていたかもしれません。トランザムバーストには意識共有によって対話を促すという効果がありますが、この紛争においてより重要視されたのは人類をイノベイターへと変革させるという効果です。いかに過激な反イノベイター思想を持つ人間であっても、自身がイノベイターへと変革してしまってはもはや活動を続けることはできません。紛争鎮圧のために地球上で繰り返されたトランザムバースト。その影響はやがて一般市民へと波及し、特に若い世代の変革が顕著であったものと思われます。二世代を経て人類の4割をイノベイターが占めることとなりました。

イノベイター増加のもう一つの要因として可能性が考えられるのは、宇宙に鎮座する超巨大ELSの存在です。刹那との対話後、花へと姿を変えたELSの中央部からはGN粒子とおぼしき緑色の光が放出されています。あの時点において超巨大ELSが自らの内部にオリジナルのGNドライヴを宿し、地球圏にGN粒子を放出し続ける存在となっていたとしたら。それは間違いなく地球上にも影響を及ぼし、人類のイノベイターへの変革を促すこととなったはずです。
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