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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.17

ジンクスIVへと変貌したELSはさらにバイカル級航宙巡洋艦をも模倣して攻勢を強め、連邦軍の布陣は一気に引き裂かれることになりました。陣形を立て直す猶予を得るべく超巨大ELSへ向けて再び発射されたGNレーザー砲も、防御手段を学習されたことで無効化され、全軍に動揺を生むだけの結果に終わります。ついには防衛線を突破されてELSの一部が地球へと迫りましたが、それを食い止めたのはようやく戦場へと到着したCBでした。ELSを消滅させた粒子ビームを目撃したアンドレイがそれがガンダムから放たれたものであることにすぐに気付いたのは、オリジナルのGNドライヴを使用するCBの粒子ビームは色が特有であるためです。CB出現の報はすぐにマネキンに伝えられますが、確認されたガンダムが2機のみであるということは、マネキンにとっては大きな計算違いであったはずです。かつてCBは4機のガンダムで100機以上のアロウズに対して決戦を挑みました。ガンダムにはそれだけのポテンシャルがあることを実際に戦ったマネキンは理解しており、ELSとの戦いへ向け、CBの戦力もその戦術に組み込んでいたであろうことは間違いありません。それだけに、ガンダムの数が期待していた半数であるという報告には、戦力の出し惜しみが許される状況ではないはずだと、スメラギに対して怒りさえ覚えたかもしれません。

戦闘に突入したサバーニャとハルートはその対多数戦闘能力を発揮し、崩壊しかけていた連邦軍の立て直しに貢献します。たとえ刹那が復帰できなくとも、とライルは気を吐きますが、自分たちにできることは時間稼ぎだけであることは十分に承知していたはずです。いくら中型以下のELSを撃破したとしても、大型GNレーザー砲さえも防ぐ超巨大ELSの進行を阻止する手段はありません。もはや尋常な戦いにおいては人類に勝利はあり得ないということは、マネキンでさえも認めざるをえなかったでしょう。白旗を挙げることが出来たならば、その意思をELSに伝えることが出来たならば。戦闘の指揮に忙殺されながらも、この時のマネキンの脳裏に浮かんでいたのは、火星で戦死したというデカルト・シャーマンの存在であったかもしれません。デカルトは曲がりなりにもELSから何かを感じ取っていました。彼のようなイノベイター、そして連邦が隔離した強いイノベイター因子を持つ者達の可能性をギリギリまで追求し、ELSの真意を探り、戦い以外の道を模索すべきではなかったのか。戦い勝利することが紛争根絶への道だと信じて戦術予報士となったマネキンにとって、ELSとの絶望的な戦いはその信念を根底から覆されるものであったことは間違いないでしょう。
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ELSジンクスとガンダムタイプ

複数の小型の個体が合体することでジンクスIVへと変貌したELSは、ビーム兵器やGNミサイルを駆使して攻撃を開始しました。ジンクスIVそのもののようにも見えるELSジンクスですが、細部の形状や機能などには多くの違いがあります。特に腕部については腕と武装が一体化した形状となっており、これはELSが手に物を持つという行為を理解できなかったためか、あるいは合理化した結果と考えられます。腰のGNバルカンの砲口も塞がっているほか、各部のスラスターも機能しているようには見えません。おそらくELSの特殊な推進方法をMSの姿でもそのまま使用しているのでしょう。性能面でもオリジナルのジンクスIVとの間には大きな差が存在します。それはELSジンクスは無人機であるということです。あるいは搭乗していたパイロットをも一つのパーツとみなし、コックピット部分には人間を模したオブジェクトが鎮座しているという可能性もありますが、いずれにせよパイロットの安全を考慮する必要はありません。そのため、たとえスペック上は同等であっても、ELSジンクスは有人のジンクスIVには不可能な限界性能を引き出すことができるのです。

火星に派遣されていたために戦闘開始に間に合うことが出来なかったソルブレイヴスはようやくの帰還を果たし、ジンクスIVへと変貌し連邦軍を圧倒しつつあったELSの群れに楔を打ち込むことに成功します。その際、ELSジンクスの姿を確認したグラハムは思わず「相手がガンダムタイプとは」と叫んでいます。このセリフは劇場版の企画段階において、グラハムがダブルオーライザーに変貌したELSと戦う場面があったためとされていますが、劇中での話に限るならば、グラハムはジンクスをガンダムであると認識しているということになります。ジンクスはガンダムスローネを基に開発された機体であり、系譜の上では歴としたガンダムであることは確かです。しかしその事実は公表されておらず、いかに戦後のCBとの関係に変化があったとはいえ、連邦軍がジンクスをガンダムタイプなどと公に分類するとは思えません。ジンクスについて、グラハムが明確にガンダムであると認識している理由としては、ミスターブシドーであった時期において、かつてのCBが壊滅するまでの内幕をリボンズから明かされていたためという可能性が考えられます。ガンダムタイプと語るグラハムの口調には、多分に自嘲の念が込められているように見えました。刹那との戦いでガンダムへの妄執を晴らしたはずのグラハムでしたが、戦場で再びガンダムタイプと相対したことは、彼に自らの宿命、断ちがたい因縁をあらためて悟らせることとなったのかもしれません。
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決戦に臨むジンクスIV

ELSとの決戦では主力であるジンクスIVも重装備が施されて出撃することになりました。肩のスラスターには用途を推力に限定された大型GNコンデンサーが装着され、擬似GNドライヴの出力をより多く武装に割り当てることで攻撃力が高められています。また、指揮官機などはGNフィールド発生装置を内蔵した大型GNシールドを両肩に装備するなど、ELSとの接触を避けるための対策が図られています。中でも特殊な装備で出撃していたのがアンドレイ機で、ジンクスIIの時期に開発されたGNバスターソードを大型GNシールドの代わりに左肩に装着していました。試験運用後、格納庫の奥で眠っていたものを引っ張り出してきたものであり、GNバスターソードはGNフィールド発生装置としての機能も持っていることから、防御力を維持しながらも攻撃力を高めるために選択したのでしょう。GNバスターソードと同時期に開発されたジンクス用の装備には大型のGNキャノンもありますが、この戦いにおいて装備して出撃したという機体の記録はありません。ELSに対してはビーム攻撃が有効であることから用いられてもおかしくはなかったはずですが、ロングバレルのビームライフルであれば十分な威力を持つこと、GNキャノンは狙撃用のカメラを備えた特殊な頭部とセットで開発されていたことなどから、決戦においてあえて使用を試みるパイロットはいなかったものと思われます。

対ELS用の武装として有用であるように思えるものの、連邦軍が用いることが無かった武装としては、ガデッサが装備していたGNメガランチャーが挙げられます。ジンクスIVやGNZシリーズを新規に量産することは困難であるものの、GNメガランチャーだけならば「ソレスタルビーイング」に残されているラインを使えば短期間で製造することが可能で、MSと比較すればコストも格段に低く抑えられます。また、大型のGNコンデンサーを外付けすることが出来るため、限られた発射回数ならば旧世代機でも使用することは可能です。最大までチャージすれば艦船をも一撃で破壊し得るGNメガランチャーを大量生産し、MS部隊に携行させて斉射していたならば、大きな戦果を上げることができていたのではないでしょうか。ガガさえも動員した連邦軍であれば、GNメガランチャーの運用についても検討されたものと思われますが、おそらく膨大な数が必要とされた対艦GNミサイルの生産が優先されたのでしょう。もし連邦軍がGNミサイルではなく大量のビーム兵器を量産することを選択していたならば、いずれ圧倒されることは変わらないとしても、それまでの時間には多少の差が生じていたかもしれません。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.16

対艦GNミサイルによる先制攻撃の成果が想定を大きく下回ったことを受け、マネキンは直ちに作戦を次の段階、MSと艦隊による直接攻撃へと移行させます。その口火を切ることになったのは、巨大艦「ソレスタルビーイング」に搭載された超大型GNレーザー砲です。限界までチャージされたレーザーはELSの群れを焼き払い、超巨大ELSを貫通するほどの威力を発揮し、消沈しかけていた軍の士気を高めることになりました。しかしこの砲撃の際、超巨大ELSの中心を射抜かなかったことについては疑問が残るところです。対象がほぼ球形であるならば、その急所も中心に存在する可能性は高く、とりあえずそこを標的とするのが定石であるように思えます。予想以上に早くレーザー砲を使用することとなったために準備が不十分であった、あるいはよりELSの密度が高い場所を優先したなどの理由が考えられますが、初弾において致命の一撃を狙わなかったことを、時を置くことなくマネキンは悔いることになります。

レーザー砲の一撃によって勢いづけられた連邦軍は果敢にELSの群れへと切り込み、無限とも思える敵の掃討を開始しました。しかしMS部隊が戦闘を開始してから間もなく、複数の小型ELSが合体してジンクスIVと同じ形状へと変貌を遂げるという異変が起こります。恐るべきは姿形だけではなくその性能をも再現していることで、コピーした擬似GNドライヴを内蔵したELSジンクスは紫色のGN粒子を放出し、ビーム兵器やGNミサイルさえも使用して人類側に攻撃を開始します。1体のMSを形成するために4~5体の小型ELSが必要だとしても、ELSの総数は数十万を数えます。その全てがMSへと変貌したならば、もはや人類にはなす術がありません。ELSは火星での戦いでガデラーザ、そしてダブルオーライザーを取り込んでおり、ガデラーザに変貌した個体も存在していたとされています。多数の中型ELSがガデラーザに変貌し巨大なGNブラスターを斉射したとしたら、その破壊力は一撃で連邦軍を全滅させうるものとなっていたはずです。しかしほとんどの個体はジンクスIVに変貌し、また変貌したのはELS全体のごく一部に過ぎませんでした。この戦いにおいてELSがジンクスIVへの変貌を選択し、それが限られた数であった意図を読み取ることができていたならば、あるいは連邦軍には別の対処も可能であったかもしれません。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.15

地球連邦軍が設定した最終防衛ラインから1000万kmの地点まで超巨大ELSが迫ったことを受け、連邦軍はついに総攻撃を開始します。出撃の際、ジンクスIVに搭乗したアンドレイはELSとの戦力差を「ざっと10000:1」であると語っていました。小型ELSや中型ELSの単体での戦闘能力はそれほど高くないことから、連邦軍のMSが単機で多数のELSを撃破できると想定しても、その戦力差は万倍であるということだと思われます。つまり単純な数の差ではおそらく数十万倍以上なのでしょう。人類側にアドバンテージがあるとすれば、ビーム砲やGNミサイルなど、同時に多数を攻撃することが可能な兵器を持っているという一点に尽きます。連邦軍がELSに対する先制攻撃として使用したのも、1基の爆発で多数のELSを撃破することが期待できる対艦用のGNミサイルの斉射でした。この大型のGNミサイルは全長が8.6mあり、バイカル級航宙巡洋艦の場合、左右のランチャーに合計192基が搭載されています。連邦軍の艦船は合計48隻で、バイカル級よりも搭載量が多いであろう新型艦や輸送艦が多く含まれていることを考慮すれば、発射された対艦GNミサイルの数は万に及ぶはずです。GNミサイルはMSが手に持つビームサーベルの発振器程度のサイズのものでもMSを破壊するだけの威力を持つことから、その数十倍、MSの半分程度のサイズの対艦用GNミサイルともなれば、たとえ中型のELSであっても一撃で破壊しうるでしょう。

ELSが地球に到達するまでの二か月間、連邦軍はこの対艦GNミサイルを大量生産するためにその工業能力の多くを費やしたものと思われます。GNミサイルが想定通りの威力を発揮したならば、その時点で小型・中型のELSはほぼ壊滅し、あとは巨大粒子砲によって鈍重な超大型ELSを少しずつ削り取っていくことで勝利を得られるという算段だったのでしょう。つまり対艦GNミサイルによる攻撃は、連邦軍にとって初手にして切り札であったわけです。それだけに、GN粒子が巻き起こす破壊の嵐の中から無傷のELSが姿を現したことには、連邦軍は大きな衝撃を受けることとなりました。GNミサイルによる攻撃は多数の小型ELSを破壊することには成功しましたが、中型以上のELSにはほとんど意味を成すことはありませんでした。これはELSは大きい個体ほど高い能力を持つためで、探査船エウロパとして地球に現れた際や、火星での戦いで何度もGNミサイルを経験したことにより、ELSはGN粒子の性質を理解し、粒子制御を行うことでGN粒子の爆風を受け流す方法を会得してしまっていたのです。総指揮官として表情に出すことこそ堪えたものの、この事実にマネキンは震え上ったことでしょう。ELSとの戦いが長引くほどに、人類側の兵器は通用しなくなっていくということを意味しているからです。
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GNZ-004/BW ガガキャノン

ELSを迎撃するために戦力をかき集めた連邦軍でしたが、MS部隊の絶対数が不足していることは明らかでした。そこで連邦軍はヴェーダに協力を要請し、巨大艦「ソレスタルビーイング」内に残されていたイノベイド専用MS「ガガ」と、搭乗するイノベイドパイロットの提供を受けることとなります。特攻用として開発されたガガは脚部が無いために運動性こそ一般的な擬似GNドライヴ搭載型MSに劣るものの、機動力は高く、ELSには十分に対応が可能であると考えられたのです。ガガは腕部が特殊であるためビームライフルなどは保持することが出来ず、内蔵武装も胸部のGNバルカンのみと、火力にも大きな問題がありましたが、ジンクスIII用のビームライフルを流用した2基のGNキャノンを背部に装備することで解決が図られています。キャノンを装備したおよそ100機のガガは連邦によって「ガガキャノン」という名称を正式に与えられ、ELS迎撃艦隊の本陣となる「ソレスタルビーイング」を中心に配備されました。

ガガキャノンに搭乗するのは、かつてリボンズに従っていたブリングやデヴァインと同じ遺伝子を基に生み出されたマイスタータイプのイノベイドです。一人一人がガンダムマイスターに匹敵する戦闘能力を持っており、CBとの戦いではひたすら体当たりを行うという特攻を強いられたことでその技量を活かすことが出来なかったものの、通常の戦闘を行うのであれば、たとえガガという特殊な機体であっても連邦軍の一般のパイロットが搭乗するジンクスに劣らぬ働きを見せることでしょう。リボンズによって支配されていた頃の彼らは、躊躇することなく特攻を遂行できるように自我を封じられた状態であったと見られます。しかしティエリアが最上位の権限を持つイノベイドとなったのちにはその封印も解かれ、それぞれが自分の意思でイノベイドとしての使命を全うすべく励んでいたものと思われます。特攻でこそないものの、ELSとの戦いはきわめて生還率が低いであろうことは明らかですが、ティエリアの性格を考えれば、ヴェーダによる絶対命令を用いてイノベイドたちに戦いへの参加を強いたとは考えにくいところです。おそらくガガキャノンに搭乗した100人あまりのイノベイド達は、ティエリアからの要請を受け、自らの考えで死地に赴くことを決意したのではないでしょうか。
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地球連邦軍の総戦力

地球へ迫りくるELSを迎撃するため、地球連邦軍はその総力を結集することとなりました。しかし公式設定資料によれば、集結した戦力は艦船48隻、MSは120機で、MSの1/3は旧世代機であったとされています。艦船の数は妥当であるとしても、120機というMSの数については、少なすぎるのではないかと疑問を抱かざるを得ません。艦船の内訳は、ナイル級大型戦艦が2隻、ヴォルガ級航宙巡洋艦が11隻、バイカル級航宙巡洋艦が8隻、ヴァージニア級輸送艦が11隻、ラオホゥ級輸送艦が12隻、ウラル級大型輸送艦が3隻となっています。ナイル級のMSの搭載可能数は22機であり、搭載可能数が6機であるバイカル級を改装したヴォルガ級は、少なくとも10機以上を搭載することができるでしょう。つまり輸送艦を除いた艦船だけでもMSの搭載可能総数は200機を越えていることになります。120機という数字を額面通りに受け取るならば、戦闘艦の約半数はMSを搭載せずに出撃し、輸送艦に至ってはMSを全く搭載していなかったということになっていまいます。

主力である擬似GNドライヴ搭載型MSの数がわずか80機程度のみであるというのも、あまりにも頼りなく思えます。しかしこの数字に関しては、原因が明らかであるため不自然とは言えません。地球連邦軍において擬似GNドライヴ搭載型MSの配備がいまだ十分ではなかった時期とされるCBとアロウズとの戦いでは、控えめに見積もっても数百機の擬似GNドライヴ搭載型MSが失われました。そして戦後はアロウズのスキャンダルを受けた軍縮の流れと予算の縮小によってMSの新規増産が停滞したため、連邦軍が保有する擬似GNドライヴ搭載型MSの数が多いわけがないのです。動員された旧世代機が数十機だけというのも、理由は考えられなくはありません。旧世代機ではあっても、大型のGNコンデンサを搭載したビームライフルやGNミサイルを装備すれば十分に火力として機能するでしょう。しかし擬似GNドライヴ搭載型MSでさえ対応が困難であるELSの機動力に旧世代機が対応できるわけもなく、貴重なパイロットを無為に失うだけとなることがわかり切っていたことから、機体数は潤沢であっても、旧世代機の配備はごく限定された数となったのだと思われます。
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