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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.21

超巨大ELSの内部へと突入した刹那とティエリアは、ついにその中枢とおぼしき部位へと到達します。突入から中枢へと至るまでの間、ELSがダブルオークアンタに対して妨害を行うことがなかったのは、強大な破壊力を持つクアンタが内部で戦闘を行った場合には、ELSにとっても無視できない被害が発生するであろうこと。そしてELSもまた刹那に対して強い興味を持っていたためと考えられます。刹那が火星において自らと意思疎通を試みた存在であることを認識していたのでしょう。ELS側にも対話の意思があることを感じ取った刹那は、ダブルオークアンタの性能のすべてを開放した「クアンタムバースト」によってELSとの再びの意識共有を決行します。

クアンタムバーストはトランザムバーストよりも高いレベルでの意識共有領域を形成するシステムです。使用する際には2基のGNドライヴを直結し、生み出されるGN粒子の純度が極限まで高められるほか、6基のGNソードビットを機体周辺に配置してクラビカルアンテナとして機能させることで、放出された高濃度圧縮粒子を制御し、より高密度の意識共有領域を形成することが可能となっています。さらにELSとの対話においては、クアンタは装甲の多くをパージしてGNコンデンサを外部へと露出させることで、粒子の放出効率を高めることを選択しました。この状態では防御力は当然ながら、推進器のいくつかも失われてしまうため運動性は低下することとなります。機体バランスも崩れるでしょう。しかしELSとの対話の失敗は人類の破滅と同義であり、戦闘能力を保持しておくことに意味はありません。ティエリアの指示を受けるまでも無く、刹那は初めからこの最大限の効果を発揮できるクアンタムバーストを行うつもりであったはずです。

クアンタムバーストによってELSと意識を繋いだ刹那は再び情報の奔流に襲われることとなりました。対象がELSの中枢であること、より深いレベルでの意識共有であることから、その圧は脳細胞を損傷した時を越えるものであったかもしれません。刹那だけであれば失敗に終わっていたであろうELSとの対話を成立へと導いたのは、ティエリアがイアンに依頼しクアンタに搭載された、ヴェーダの小型ターミナルでした。これによって刹那はヴェーダとの脳量子波によるリンクが可能となり、膨大な情報の負荷をヴェーダへと受け流すことで、ELSの真意へと到達することに成功することになります。この時点でヴェーダが存在する巨大艦「ソレスタルビーイング」もすでにELSに侵食されており、マネキンの司令部さえも機能を停止している状況にありました。刹那たちのELS中枢への到達がもう少し遅れていたならば、ヴェーダもELSによって侵食されて刹那を支援することができず、クアンタムバーストによる対話は成功していなかったかもしれません。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.20

トランザムを使用し、GNバスターライフルから発射した膨大な粒子ビームによって超巨大ELSの表面を切り裂き、内部への侵入を試みようとした刹那でしたが、そのビームはELSが粒子制御を学習してしまっていたことで無効化されてしまいました。ティエリアがELSと連邦軍の攻防のすべてを把握していたであろうことは確かで、連邦軍の大型GNレーザー砲すら防ぐ超巨大ELSにはダブルオークアンタの攻撃も通じない可能性があるということもわかっていたでしょう。それでもその点を刹那に注意喚起することが無かったのは、砲撃よりも粒子の収束率の高いビームサーベルによる至近距離からの攻撃ならば、あるいはその防御を突破できる可能性もあると考えたからかもしれません。

一刻を争う状況で、内部への侵入手段に窮する刹那の道を切り開いたのは、機体はELSによって浸食され、もはや戦闘不能の状態となっていたグラハムでした。クアンタによって切り裂かれ、修復されつつあった超巨大ELSの傷口へとグラハムは飛び込み、自爆することによってふたたび傷口を開き、刹那のための侵入口を作り出すことに成功します。この時点でグラハムが率いていたソルブレイヴスは全機が失われており、戦後に創設され、ブレイヴのロールアウトからまだ間も無かった精鋭部隊は壮絶な最期を迎えることとなりました。

刹那は超巨大ELSの内部へと突入することに成功しますが、その中枢に至るにはまだ時間が必要でした。超巨大ELSの直径は約3000kmもあり、内部はELSの母星の海と同質の液体によって満たされているからです。宇宙空間であれば1000kmの距離も一瞬で踏破できるガンダムですが、水中においてはその速度は大幅に減衰してしまいます。さらには中枢が中心部に存在するとは限らず、内部に存在するELS、構造物との接触にも注意を払わねばなりません。刹那が急ぎながらも慎重にELSの中枢を目指す中、外部での戦闘の様相にも変化が起きていました。それまではELSの侵攻を阻止することを目的としていましたが、もはや連邦軍が壊滅状態となったことで、個々がただ生き残るためにあがくためのものとなっていました。刹那という希望の存在を知るCBにとってはそれはまだ意義のある戦いであったでしょうが、何も知らない連邦の軍人達の絶望の深さは想像に難くありません。

そのような状況で、アレルヤとマリーが搭乗するハルートは生き残っている連邦軍の救出に全力を注いでいました。3人による反射と思考の融合によって、自機だけであればELSに付け入る隙を許さないハルートも、その救出活動によって徐々に損耗し、遂には戦闘不能となり、ELSに撃破されてしまうことになります。ハレルヤはその行動を偽善であると突き放しますが、もはや勝利が無いこの戦いにおいてなすべきは、刹那による対話が成るまでに一人でも多くの人間を生き残らせることであることは、ハレルヤにもわかっていたはずです。この戦いにおいてガンダムは多くの連邦軍人の生還に寄与することとなりました。アロウズとの戦いの後も、かつての武力介入で大きな被害を受けた三陣営出身の軍人たちにはCBに対する敵意が根深く残っていました。それが簡単に払拭されることはないとしても、ELSとの戦いの後の時代において、アレルヤの行動は大きな意味を持つことになるのかもしれません。
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