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E・A・レイ

争いを止められない人類に絶望しながらも、その人類の未来を誰よりも案じ、ソレスタルビーイングを創設した人間嫌いのイオリア・シュヘンベルグ。そんな彼にも胸の内を全て明かし、理想を共有できる友人がいました。それが劇場版の最後に登場した人物、エターナル・アラン・レイです。アランもまた天才的な科学者であり、だからこそ孤島に一人で隠棲していたイオリアとも繋がりを持つことができたのでしょう。イオリアと比較すると若いように見えますが、2091年時のイオリアはまだ40歳であり、イオリアが老けて見えるだけでさほど二人の歳は離れていないのでしょう。

創設者であるイオリアをのぞけば、アランは最初のソレスタルビーイングとも言うべき人物であり、組織を創設する上で大きな役割を果たしたであろうことは確かです。人と関わりを持つことを嫌うイオリアの性格を考えれば、アランこそが創設時のCBにおいてリーダーとしての役割を担っていたと考えるのが自然でしょう。彼は組織に自らの遺伝子データを提供しており、それを基にリボンズタイプのイノベイドたちが生み出されることになります。リボンズが自尊心を肥大させ、何としても自らの手で計画を完遂しようとしていたのは、あるいは自らがイオリアの最初の同志の遺伝子を受け継いでいる存在であることを知っていたからなのかもしれません。

エピローグにおいてアランが語るイオリアの功績は、GN粒子の発見とそれを生み出すGNドライヴの基礎理論構築。量子演算処理システムの発明、そして軌道エレベーターを利用した太陽光発電システムの提唱までです。そこにはイノベイターという人類の可能性と、それを模した存在であるイノベイドについての言及はありません。この時点ではイオリアもイノベイターという可能性に至っていなかったのかもしれず、ヴェーダの生体端末という存在である以上、イノベイドの研究はヴェーダ完成後に始まったと考えるべきです。

ただ、イノベイドがイオリアの功績として語られなかったことで、イノベイドの理論は別の人間によって提唱、実現されたものだったという可能性も否定できなくなります。そもそもイオリアは不確実ではあっても人間による計画遂行を徹底して望んでいた人物であり、長きにわたって組織を存続、隠蔽する上で有効ではあっても、不老不死の人造人間を量産するなどという行為を果たして是としたかどうかは疑問が残るところです。では非人道的ともいえるイノベイドを考案し、組織の根幹に据えたのは誰なのかといえば、それこそがE・A・レイなのではないでしょうか。最初のイノベイドとして、彼の遺伝子が使われたリボンズ・アルマークが生み出されたのも偶然ではないのかもしれません。
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