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艦艇の主機関

連邦軍の艦艇には複数の擬似GNドライヴが搭載されていますが、その搭載数は最も大型なナイル級大型航宙戦艦でも4基、グラハム率いるソルヴレイヴス隊の専用艦アルトリウスは2基で、同規模のバイカル級もおそらく同数であると考えられます。バイカル級を改修し、大型化したヴォルガ級などはナイル級と同程度まで搭載数が増えているかもしれません。いずれにせよ、水中用MAであるトリロバイトでさえ3基の擬似GNドライヴを搭載していることを考えると、その搭載数は意外なほど少ないように思えます。では艦艇に搭載されている擬似GNドライヴは特別で、MSのものよりはるかに大型、粒子生産量も多いのではないかというと、そうではないでしょう。より多くの粒子を得たいのであれば、搭載する擬似GNドライヴの数を増やせば良いだけであり、強いて艦艇専用の擬似GNドライヴを新たに開発する必要などありません。艦艇はMSのものと同じ擬似GNドライヴ2~4基によって十分なGN粒子を確保できているのでしょう。

しかし艦艇はただ推進するだけでもMSとは桁違いの膨大なGN粒子を消費し、戦闘時には多数の大型粒子ビーム砲を使用、広大な装甲を粒子で強化しなければなりません。必要とされる出力は擬似GNドライヴ数機程度では全く足りないはずです。つまりCBのプトレマイオス2と同様に、連邦軍の艦艇も戦闘時に消費するGN粒子の大半は搭載されたGNコンデンサから得ているということになります。MSにおいては主機関はGNドライヴ、GNコンデンサはその補助という役割となっていますが、艦艇においてはGNコンデンサこそが主機関なのです。これは超大型MAガデラーザにもあてはまることで、ガデラーザは7基の擬似GNドライヴを搭載していたものの、艦艇サイズの巨体がMS以上の機動力を発揮し、莫大な粒子を消費するGNブラスターを用いた戦闘は、擬似GNドライヴの粒子生産量の範囲に収まるはずもありません。戦闘時の出力の多くをGNコンデンサに依存していたであろうことは明らかで、ガデラーザが全力で戦闘可能な時間は決して長くはなかったはずです。
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ハイブリッド・イノベイター

イノベイターとしての高い素質を持っていたことから脳量子波によってELSを引き寄せ、半身を侵食されて連邦軍の研究所に運び込まれた少女アーミア・リー。刹那がELSとの対話を果たしたことにより、アーミアの体を侵食していたELSは人体の完全な模倣を行い、彼女は意識を取り戻すこととなります。アーミアのように肉体をELSに侵食されながらもELSと意思疎通を果たし、共生の道を選択したイノベイターは「ハイブリッド・イノベイター」と呼ばれ、その特殊な在り方から、ELS到来後の世界において重要な役割を担っていくことになります。地球に来訪後、ELSは数多くの人間に対して侵食を行いましたが、その中でハイブリッド・イノベイターとして覚醒し、生還を果たすことが出来たのはきわめて少数でした。これはそもそもイノベイターとして素質が高くなければELSとの対話が成立せず、対話が成ったとしてもELSを肉体の一部として受け入れて生きていくという選択をできなかった者がほとんどであるためです。確認されているハイブリッド・イノベイターは、アーミア・リー、CBのレオ・ジークなどごく少数で、あるいは全世界でも数えるほどにしか存在していないのかもしれません。

彼らの特徴は、ELSと融合した部位がELS特有の金属色となっているということです。ELSは人間の肌の色、質感を完全に模倣することも可能であるはずですが、あえて金属色を残したままとなっているのは、共生という関係である以上、相手の個性を尊重するという意味があるのだと思われます。ハイブリッド・イノベイターの能力については未知数であるとしか言えません。しかし肉体の一部がELSによって置き換えられているというだけではないことは確かでしょう。たとえばレオ・ジークは頭部を除く肉体のほとんどをELSによって侵食されましたが、彼の肉体が以前と変わることなく脳からの電気信号によって筋肉を動かすものであるのかも定かではありません。神経を介することなく、脳量子波によって肉体に命令を伝えられるならば、反応速度はより速くなるはずです。脳量子波についても通常のイノベイターよりも強くなっている可能性は高いでしょう。そしてなにより、ELSという知的好奇心がきわめて強い生命体と常に意識が繋がっていることも、大きな意味を持つはずです。必要に応じてELSの膨大な知識の一部を借り受けるということもできるのかもしれません。
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既存の人類とイノベイター

ELSとの対話を経た地球圏では、既存の人類と進化した人類であるイノベイター、そして全く異質な生命体ELSとが共存を目指していくことになります。この内、ELSについては来訪した個体のそのほとんどが融合し、巨大な花として宇宙に留まったことから、少なくとも地上においては大きな問題を起こすことは無いものと思われました。しかしその結果、既存人類の危機意識はイノベイターへと向けられ、同じ姿形、同じ言葉を持ちながらも大きな能力格差が存在する両者の対立は、イノベイターの増加に比例して深まっていくこととなります。もしELSが一定の脅威を与え続けるような危険な存在であったならば、あるいは人類間の争いの火種はくすぶったまま大きな炎とはならず、そのまま消え去っていたかもしれません。既存人類とイノベイターの紛争が勃発したことは、対話後のELSがいかに安全で、人類に対して不干渉であったのかの証左であるとも言えます。

既存人類がイノベイターに敵意を抱いてしまう最たる理由は、やはり寿命の問題であると思われます。身体能力の格差については、24世紀の社会では一般的となっている身体機能補助用のナノマシンの投与や、高度な義体技術を応用した装具などによって、ある程度解消することが可能でしょう。また、脳量子波による意識共有についても、すでに情報通信技術がきわめて発達している社会においては必ずしも便利なものとは言えません。上手く制御できなければ、知られたくない心の内を他者に曝け出し、知りたくもない他者の胸の内を知ってしまうという危険性もあり、むしろそのような能力は要らないと考える人々も多いでしょう。連邦軍のイノベイターであったデカルト・シャーマンなどは、モルモットのごとく扱われていることへの不満もさることながら、その強い脳量子波能力によって他者の思考を読み取れてしまうストレスで、より荒んでしまっていたようにも見えました。

既存人類によるイノベイター排斥の流れを加速させないための最大の方策として、「イノベイターへと変革する可能性は誰にでも与えられている」のだということを連邦政府は繰り返し訴えることになります。自身や家族、友人が明日にもイノベイターとなっているかもしれないと想像すれば、大半の人間は排斥運動に参加することを思いとどまるはずだからです。その一方で、既存人類とイノベイターの能力格差を解消するための具体的な施策も実行していかねばなりません。この場合、圧倒的多数の既存人類の能力を底上げするよりも、少数のイノベイター達の能力を制限することの方がはるかに容易であり、おそらく初期の段階においては、人権を踏みにじるかのような様々な制約がイノベイターに課せられたであろうことが想像できます。それらは対立を回避することが目的であったものの、既存人類に対する強い敵意をイノベイター達にも生じさせることとなり、結果的に両者の争いが数十年という長きに及ぶ原因の一つとなったとも考えられます。
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