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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.14

地球圏への帰還を果たし、イアンたち補給部隊と合流したプトレマイオス2ですが、火星での戦いではダブルオーライザーとラファエルガンダムを失い、なによりも刹那が脳に損傷を負い昏睡状態となったことで、その戦力は半減以下と言うべき状況です。ついに完成したダブルオークアンタも、イノベイターである刹那が搭乗しないことには試運転を行うことも出来ません。刹那がELSに対してトランザムバーストを試みるであろうことは、スメラギには予測が出来ていたはずです、クアンタという切り札を残している以上、あの時点において刹那を失いかねないような危険に晒すべきではなく、指揮官として判断を誤ったと言う他ありません。しかしCBにとっては得るものが無かったわけではありません。刹那のトランザムバーストの失敗によって、ELSの情報量は個人が受け止めきれるものではないということを理解したティエリアは、ダブルオークアンタにヴェーダの小型端末を搭載することをイアンに依頼します。これは機体とヴェーダとをより強力にリンクさせるためのもので、ELSから送られる情報をヴェーダで処理することで、刹那の負担を軽減することを目的としています。火星での経験がもし無かったとしたら、たとえ刹那が万全の状態でダブルオークアンタに乗り込みトランザムバーストを行ったとしても、ダブルオーライザーの場合と同様の失敗に終わっていたかもしれません。

ELSは地球まで4000万km、約7日の距離まで迫っており、刹那が昏睡から目覚める目途は立たず、戦えるガンダムはたった2機だけであっても、CBは戦場に向かわなければなりません。圧倒的多数のELSへの対応能力を少しでも向上させるため、サバーニャとハルートにはさらに武装が追加されることとなります。サバーニャには4基のホルスタービットが増設され、最大で14基のライフルビットIIを展開できるようになりました。ハルートに用意されたのは両脚部に装備するタイプの大型ブースターユニットです。かつてキュリオス用に開発された追加ユニット「ガスト」のデータが用いられていると思われ、元より強大であったハルートの機動力はさらに強化されることとなりました。しかしこのブースターユニットに求められる役割は、内蔵された大型GNコンデンサによってGNドライヴの負担を減らし、より多くの出力を火器に供給させることの方が大きいかもしれません。ユニットにはGNシザービットを格納するためのコンテナも備えられており、これによってハルートのビットの総数は2倍となり、攻撃力も大幅に増しています。最終決戦に向けて大幅な強化が施された2機のガンダムですが、それでも刹那の不在を埋めるには十分とは言えません。ELSを迎え撃つ連邦軍の総指揮官となったカティ・マネキンは、戦力として使えるものは何であれ使うつもりであったことは間違いなく、その計算の中にはCBさえも含まれていたはずです。それだけに、戦場に現れたCBの機体がたった2機のみで、しかもかつての戦いで異常な戦闘能力を発揮していた「2個付き」のガンダムがいないことには、大いに落胆したことでしょう。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.13

木星の大赤班から出現したELSの大群を迎撃するべく、連邦軍は準備を進めていました。確認されている群れがELSの全てであるならば、総力を挙げれば殲滅することも不可能ではないと、連邦軍も考えていたかもしれません。しかしそれをあざ笑うかのように、木星から新たなELSの大集団が現れたとの知らせが届きます。連邦軍が決戦を期していたELSの集団は先遣隊でしかなかったわけです。さらに連邦政府を凍りつかせることとなったのは、新たに確認された超巨大ELSの存在です。その大きさは直径約3000kmと月に匹敵する規模で、もはや人類が対抗しうる存在ではないことは明らかでした。

いかに楽観主義の人間であっても絶望せざるを得ないような状況で、それでも連邦軍が秩序立った行動を続けることができたのは、ELSの規模と比較すればきわめてささやかながらも、希望となりうる最終兵器が存在したためです。それはCBから接収した「コロニー型外宇宙航行母艦ソレスタルビーイング」に搭載された、超大型GNレーザー砲です。一射で大艦隊をも殲滅しうるこの兵器を効率的に運用することが出来ればELSの殲滅も可能であると、軍は兵士たちに対して大いに喧伝し、その士気の維持に努めたのでしょう。時間に猶予さえあれば、アロウズによる暴虐の象徴である兵器「メメントモリ」の再建造さえも連邦政府は許可したかもしれません。

絶望的な戦いとなることを覚悟しながらも、連邦政府はELSに立ち向かうことを決定しました。しかし中にはそれ以外の手段を主張する者もいたはずです。それはすなわち人類の存続のために地球を脱出するという道です。コロニー型外宇宙航行母艦は地球脱出のための方舟としてふさわしく、ELSが地球に到達するまでの二か月足らず、軍が総力を結集すれば準備も不可能ではなかったでしょう。しかし当然ながら計画を公にすることはできず、ごく限られた人数しか乗船できないことから、公平な方法で選抜することもできません。中核戦力を失った軍にはELSを退ける可能性は万に一つも無く、地球に残された人々は全滅を免れません。そこまでして脱出したとしても、ELSから追撃を受けないという保証はありません。それでもELSと戦い勝利することと比較すれば、地球脱出は合理的な考えであったはずですが、おそらく俎上に載せられることすら無かったでしょう。それは非道であるからというだけではなく、この時代のほとんどの人類にとって未だ世界とは地球がその全てであり、地球なくして人類の存続はありえないと考えるのが当然であったからです。
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補給を受けるソルブレイヴス

ソルブレイヴスの掩護によって辛くも戦場を離脱したCBは、戦闘後にソルブレイヴスと合流し、隊長であるグラハムを艦内に受け入れることになりました。この合流はCB側から提案したものですが、ソルブレイヴスがCBを助けたのは敵の敵は味方というだけのことであり、戦闘後に合流すべき理由などは本来ありません。それでもグラハムが合流の要請に応じたのは、ELSについての情報交換の必要性や、彼個人のCBに対する強い興味、そして現実的な問題として、部隊の消耗が予想以上に激しく、このままでは母艦に帰りつくことが困難と考えられたためです。連邦軍にとってはCBがテロ組織であることには変わりはなく、強い恨みを持つ者も少なくはありません。たとえグラハムという個人が信用し得る人物だとしても、連邦軍のMSを着艦させることはCBにとってはきわめて大きなリスクです。グラハムが単独でプトレマイオス2に乗り込んだのは、自らが人質役となることで部下の暴走を抑え、CBに対して含むところがないということの証とする意味合いもあったのだと思われます。

ソルブレイヴスの機体はプトレマイオス2の後部甲板に着艦し、GN粒子の補給を受けることとなりました。これによって擬似GNドライヴが回復するわけではありませんが、ブレイヴには大型GNコンデンサーも搭載されていることから、少なくとも母艦に帰還し得るだけの粒子は確保できるものと見られます。CBからの補給を受け入れざるを得ないほどにソルブレイヴスが消耗していたのは、ELSとの戦闘の激しさもさることながら、戦場に到着した時点でかなりの粒子を消費してしまっていたためとも考えられます。ブレイヴには長距離移動時に使用する専用の外付けGNコンデンサーも用意されていますが、火星に到着した時点ではすでに装備していませんでした。おそらく先行部隊がELSと戦闘を開始したとの知らせを聞き、一刻も早く戦場にたどり着くべく、まだ火星から遠く離れている地点で母艦と別れ、無茶とも思える強行軍を敢行したのでしょう。CBから補給を得られたことで結果的に速やかな帰艦を果たすことができたものの、一歩間違えばソルブレイヴスは火星宙域で大いに時間を浪費し、地球でのELSとの決戦において致命的な出遅れを犯すこととなっていたかもしれません。
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GNX-Y903V ブレイヴ

ELSに追い詰められたCBを救ったのは、連邦軍の最新鋭機「GNX-Y903V ブレイヴ」で編成された部隊「ソルブレイヴス」でした。ブレイヴはかつてグラハムがミスターブシドーとして搭乗していたマスラオ・スサノオをベースに開発された連邦軍の次期主力MSで、飛行形態への変形機能を持っています。これは大気圏内での機動力が重視されたためで、地球上のどこで紛争が起きたとしても素早く送り込むことが可能な少数精鋭部隊という構想のための機体とも言われています。ビームサーベルや実体剣など、近接戦闘に特化していたベース機に対して、部隊での戦闘を前提としているブレイヴの武装はビーム砲を中心にまとめられており、主砲である「ドレイクハウリング」と左右のバインダーに内蔵されたGNキャノンと連動させることで、スサノオにも搭載されていた強力なビーム兵器「トライパニッシャー」を発射することも可能となっています。

ブレイヴは胸部と左右のバインダーに計3箇所のGNドライヴソケットを備えており、一般機の擬似GNドライヴは胸部の1基のみであるのに対し、指揮官機であるグラハム機はバインダーに2基を搭載しています。GNドライヴの数に違いはあれど、出力の差は空いたソケットに搭載される大型GNコンデンサーで補われることから、機動力という点では指揮官機と一般機との間に大きな差は無いと思われます。構造上は3基のGNドライヴを搭載することも可能と言えますが、その場合GNコンデンサーの総量が低下し、トランザムの持続時間の短縮を招くことから、通常の任務においては行われることは無いでしょう。母艦を伴わない長期の特殊任務などであれば、GNドライヴを3基搭載するというケースも考えられるかもしれません。

ビリーをはじめとする旧ユニオンの技術者と、旧AEUの技術者たちの協力によって開発されたことから、ブレイヴの外観はかつてのフラッグとイナクトの特徴を残したものとなっています。フラッグをベースにマスラオを開発した時点から、おそらくビリーはいずれ可変MSとして結実させるつもりだったのでしょう。それは旧AEUの技術者たちの力を借りずとも可能であったはずですが、苦心の末に生み出した最新鋭機が一夜にして旧世代機へと失墜させられる悔しさを知る者として、フラッグのみを復権させることは裏切りであるかのようにビリーには思えたのかもしれません。ELSが地球に落下するという事件が起きた時点でロールアウト済のブレイヴはグラハム機のみであり、火星での戦いがソルブレイヴスとしては初めての実戦であったことは明らかです。それにも関わらず、乱れの無い部隊行動によって大きな戦果を挙げることが出来たのは、隊員が選抜されたエリートパイロットばかりであるとともに、新生したグラハムが隊長として揺るぎない信頼を得ているからこそなのでしょう。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.12

機体の貯蔵粒子も尽き、完全に行動不能となってしまった刹那を救出するべくスメラギはガンダム各機に指示を出しますが、ELSの群れに阻まれ近づくことができません。状況を打開するためにティエリアがとった手段は、脳量子波を意識的に発することで自らが囮となり、ラファエルガンダムから分離させたセラヴィーガンダムIIによって刹那を回収するというものでした。ティエリアの狙い通りにELSはラファエルへと殺到し、その隙にセラヴィーIIはダブルオーライザーからコックピットブロックを取り出し、サバーニャへと託すことに成功します。しかしELSからの脳量子波の干渉によって操縦を妨げられ、逃げ切ることができずに機体を侵食されたティエリアは、トランザムを暴走させることでELSを道連れに自爆することを選択します。囮となることを決断した時点で、こうなることも覚悟の上だったのでしょう。CBのメンバーはすでにイノベイドの在り方を知っており、目の前のティエリアが消失したとしても、それが死を意味するものではないことも理解していますが、仲間がその身を犠牲にしたという事実には変わりはなく、大きな衝撃を受けることとなりました。

ティエリアの献身によって刹那を救出することには成功したものの、ELSの執拗な追撃は止むことはありませんでした。恐るべきはELSの移動速度で、サバーニャとハルートはトランザムを使用して加速しているにも関わらず、その距離をどんどんと詰められてしまいます。刹那とライルだけでも逃がすべく、今度はアレルヤが脳量子波を発して囮となろうとしましたが、それもELSの一部を引き連れるだけに留まり、サバーニャはついに追い詰められることとなります。絶体絶命の窮地を救ったのは、CBにとっては思いもよらぬ援軍、グラハム・エーカー率いる連邦軍の最精鋭ソルブレイヴス隊でした。いまだ試験運用中である最新鋭MS「ブレイヴ」を駆る彼らは、その圧倒的な戦闘能力によってガンダムを追跡していたELSの群れを駆逐し、CBを戦場から離脱させることに成功します。ソルブレイヴスの任務は先行して派遣された部隊の掩護であったわけですが、デカルトの勇み足によって戦闘が早まり、間に合うことが出来ませんでした。もし派遣部隊がソルブレイヴスと合流した上で戦闘を開始していたならば、艦隊が全滅することもなく、少なくともデカルトはCBの到着まで生存し、火星において二人のイノベイターが邂逅するという可能性もあったかもしれません。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.11

火星宙域に到着したCBは、機体がELSに完全に取り込まれて脱出不可能となったデカルトの断末魔を聞かされることとなりました。この時点ではまだデカルトは生存していたことから、あと少しCBが到着するのが早ければ、救助することも可能であったかもしれません。木星にELSの大群が出現したことを知ったCBは、ELSの元へ向かうことを即断していました。対して、巨大な組織である連邦軍は、ELSへの対処方針を決定するまでにはある程度の時間がかかったはずです。実効性も定かではないのに、3隻しかない貴重な新型戦艦のうちの1隻と、ガデラーザを火星へ派遣するという案には反対意見も多かったでしょう。戦力を分散させず、防衛線の構築に専念すべきだという考えはもっともで、派遣部隊の全滅という結果だけを見れば、それが正しい判断だったと言えます。しかし直ちに行動を起こしたはずのCBの火星への到着は、連邦軍が先行派遣した巡洋艦2隻よりも大きく遅れることとなりました。新たにブースターを装備したプトレマイオス2の移動能力が連邦軍の巡洋艦よりも劣るとは考えにくいことから、CBは決断こそ早かったものの、出発するまでにかなりの時間を費やしてしまったことが窺えます。理由としては、最短でも一か月以上に及ぶ火星との往復に必要な物資の補給と、擬似GNドライヴ搭載型であるラファエルガンダムに対応するために、艦内の設備を整備する必要があったことなどが考えられます。

CBはELSとの戦闘に突入しますが、まともに戦えない自分が為すべきことは何か、火星に到着する以前から刹那は決意を固めてたのでしょう。意識共有によってELSとの対話を試みるため、刹那はトランザムバーストを実行します。本来のトランザムバーストにはツインドライヴが必要となりますが、粒子貯蔵タンクで稼働しているダブルオーライザーでも、ライザーシステムを応用することで擬似的なトランザムバーストを行うことが可能となっています。機体を中心とした全方位ではなく、ELSの群れへ向けて帯状に意識共有領域が展開されたのも、限られた粒子で最大限の効果を得るためと思われます。あるいはそれは、初めて他者から呼びかけられたことに対するELSの喜びの表れであったのかもしれません。刹那の呼びかけに対するELSの応えは、暴力的なまでの情報の奔流でした。それは一人の人間が到底受け止められるものではなく、刹那は脳に損傷を負い、ダブルオーライザーもELSに侵食されてしまうこととなります。最悪とも言える状況での唯一の救いは、ガデラーザの場合のように、ダブルオーライザーが無数のELSに包囲されなかったことです。これは脳を損傷したことで刹那がすぐに意識を失い、脳量子波が途絶えたためでしょう。もしデカルトのように意識を失わない程度の状態が続いていたならば、機体はELSの群れに飲み込まれ、刹那の命運は完全に尽きていたはずです。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.10

木星から出現したELSの進行を阻止するために派遣された連邦軍の部隊は、火星宙域に到着後まもなく、ELSとの激しい戦闘を開始しました。ガデラーザに搭乗するデカルトが独断で戦端を開いたようにも見えますが、いずれにせよ連邦軍にはELSに対して攻撃以外の対応手段は無く、戦闘を避けることは不可能だったでしょう。ガデラーザはその圧倒的火力によってELSを蹂躙するものの、物量の差によって徐々に押されてしまいます。そして後方に控えていた艦隊にもELSは襲いかかり、MS部隊、艦もろともにELSに取り込まれ全滅してしまうこととなります。連邦軍はELSとの直接の交戦は今回が初めてであり、その予想以上の速度に対応仕切れなかったのかもしれません。また、艦隊を守るMS部隊は最新のジンクスIVのみで編成されていたものの、練度不足から性能を引き出し切れていなかったとも考えられます。守備を第一に考えるならば、ガデラーザは単独で突出することなく、MS部隊と連携してELSに対して持久戦を挑むべきでした。後方からグラハム率いる援軍が向かっていることは連絡されていたはずで、さらにはCBもまもなく到着していました。戦闘が開始されるのがあと少し遅ければ、あるいはデカルトがより慎重に戦っていたならば、部隊は全滅を避けられたかもしれません。

艦隊がELSによって取り込まれたことを知ったデカルトは、やむなく艦もろともにELSを撃破することを選択します。この際ガデラーザは主砲のGNブラスターを使用しているものの、その出力はエウロパを破壊した時と比較すればはるかに小さく、艦の機関部のみを打ち抜き爆発させることを狙っていました。これは艦隊が全滅したことにより、ガデラーザは単独で地球に帰還せねばならず、粒子を節約しなければならなかったためです。同じ理由からトランザムの使用も許されず、孤立無援となったガデラーザは徐々に追い詰められ、ついには隙を突かれて大型のELSに取りつかれてしまうこととなります。ガデラーザは機動力こそすさまじいものの、その巨体から運動性はさほど高くありません。また、この戦闘においてデカルトは、外部からの脳量子波を遮断するノーマルスーツを着用していました。そうしなければ刹那と同様にまともにELSとの戦闘を行うことができなかったためですが、これによってイノベイターの超感覚も一部封じられることとなり、大型ELSの接近を感知することができなかったとも考えられます。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.9

地球連邦政府のELS事件収束への期待は、最悪の形で裏切られることとなりました。CBが木星の軌道上に設置した監視衛星によって、大赤班上に発生したワームホールから新たにELSの大群が出現したことが観測されたのです。その数は数万体に及び、艦船クラスの大型の個体も多数含まれていました。探査船の破片が落下した際には、ヴェーダの力を借りた情報統制によって混乱を未然に抑止することに成功した連邦政府ですが、今回ばかりはそれも不可能です。木星での異変は個人がホビーの天体望遠鏡でも観測し得るほどに大規模なものであったからです。この期に及び、連邦政府はELSという地球外生命体の存在を公式に認め、ELSが地球を目的としているという現実を受け入れざるをえなくなりました。それでも連邦政府は市民に対しては、ELSは地球へは来ない、危険は無いという嘘をつき続けるしかありません。もし地球が狙われているということが一般に知れ渡れば、その理由が探られることになります。そしてイノベイターと呼ばれる人間が存在し、ELSが引き寄せているなどという情報が不完全な形で漏洩すれば、イノベイターを地球から追放してしまえばよい、などという声が上がり「魔女狩り」が起きてもおかしくはありません。仮にそのような手段が実行されたとしても、ELSが地球への来訪を中止することは無かったでしょう。ELSの目的はすでに人類そのものに移っており、イノベイターの存在はそのきっかけでしかなかったからです。

ELSの大群が地球へと到達するまでの日数が95日と計算され、CBと地球連邦軍はその侵攻を阻止するべくそれぞれに行動を起こすことになります。連邦軍が採った方策は、イノベイターであるデカルト・シャーマンとその専用機ガデラーザを送り込み、火星においてELSと接触させるというものでした。強い脳量子波に引き寄せられるというELSの性質を利用すれば、あわよくばその進行方向を変えることができるかもしれない、最悪でもELSの進行速度を鈍らせる時間稼ぎの役割は果たしてくれるだろうという期待が込められた作戦で、いずれにせよ、餌であるデカルトと随伴する艦隊は最終的に犠牲となることを前提としています。イノベイターの研究に執心していたあの技術士官などは、貴重なイノベイターを使い捨てにするかのようなこの作戦には強硬に反対したかもしれません。

CBも連邦軍の後を追う形で火星へと向かうことになります。とはいえ、CBにもELSを食い止める策があったわけではありません。ELSの量子波による干渉で依然として刹那は満足に戦うことができず、仮に戦うことができたとしても、粒子貯蔵タンク搭載型のダブルオーライザーでは膨大な数のELSを駆逐する前に力尽きてしまうでしょう。スメラギとしてもELSを殲滅するつもりなどなく、可能な限り足止めすることで、連邦軍が迎撃体制を整えるまでの時間を稼ぎ、切り札であるダブルオークアンタの完成を待つことを目的としていたはずです。しかし刹那はこの時点ですでに、ELSに対してイノベイターとしての能力を駆使した「対話」を試みることを決意していました。ELSが脳量子波によって意思疎通を行い高い知性を持つのであれば、トランザムバーストによる意識共有でELSの意思を理解することができるかもしれないと考えたのです。ELSとの接触による耐え難い苦痛を知る刹那であれば、ELSの大群との意識共有がいかに危険なことであるかは十分に理解していたはずですが、イノベイターとしての直感で刹那はすでに悟っていたのでしょう。ELSという存在に対してはいかに戦力をそろえたとしても敵わないであろうということを。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.8

地上に落下した探査船エウロパの破片から生じたELSの被害も収束し、再びエウロパの姿を模して現れたELSもCBによって撃退されたことで、連邦政府は事態は一応の解決を見たと判断します。今回地球にELSが現れたのは偶然に過ぎず、今後はELSの性質を研究し、外宇宙から飛来する物体に対しては慎重に対応すればこれ以上の大きな問題とはならないであろうと。人類全体にとっては初めての地球外生命体との接触でもあり、むしろこの時点でのELSは脅威というよりも好奇心の対象であったかもしれません。

地上に存在するイノベイター因子の強い人々は、連邦政府が用意した脳量子波遮断施設に一時的に隔離されることとなりました。これはかつて人革連がソーマのために用意した脳量子波遮断スーツを大規模化したものと思われ、この中にいる限りはELSを引きつける恐れはなくなるようです。しかし隔離された人々は自らがイノベイターと呼ばれる存在であることを知らず、ELSの脅威も理解できないことから、収容の際には多くの混乱があったことは想像に難くありません。刷新されたといえ、連邦政府はごく最近まで反連邦思想を抱くものをその疑いがあるというだけで摘発し、強制収容所に送り込んでいました。そのスキャンダルが冷めやらない時期であるだけに、収容された人々や家族は大きな恐怖を味わったことでしょう。

ティエリアが合流したCBでは、ELSとの戦いを経てあらためてその対応について話し合いが行われていました。知的生命体であるとは思われるものの意思疎通が図れず、人類にとっては攻撃としか思えない行動をとるELSとは戦うしかないという考え、そしてあくまで対話の手段を模索すべきだとという考えとで意見は別れますが、刹那は明確な答えを出すことができません。曲がりなりにも刹那だけが量子波によってELSの意思のようなものを感じ取っていたからです。直感的にELSへの攻撃を躊躇ったことは、ELSには敵意が無いことの証のようにも思えます。しかしその感覚を共有できる者がいないことから、自らの考えが正しいのか否かを確かめる手段が刹那には無く、ただ「わからない」と答えるしかないのです。

同じイノベイターでも、連邦軍のデカルト・シャーマンはELSの脳量子波をただの「叫び」であると切り捨てていました。これはイノベイターとして能力の差、あるいはデカルト自身の攻撃的な性格から理解を拒んでいるためとも考えられますが、彼の機体が擬似GNドライヴ搭載型であることも関係しているかもしれません。オリジナルのGNドライヴから生み出されるGN粒子には、脳量子波による意識共有の触媒としての効果があり、擬似GNドライヴを使用するデカルトは、刹那ほどには深くELSの意思を感じ取ることができなかったのかもしれません。
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GN-011 ガンダムハルート

破壊されたはずの木星探査船「エウロパ」に変貌したELSがプトレマイオス2に接近してきたことで、CBに復帰したばかりのアレルヤとマリーも新型機に搭乗し出撃することとなりました。「GN-011 ガンダムハルート」は第四世代機であるアリオスとその支援機GNアーチャーを統合発展させた機体で、より大型化、多機能化させたブースターユニットがガンダム本体に直接装着されています。以前のように分離することはできないものの、アーチャーアリオスとの比較では重量は9トンほど軽くなり、脚部GNコンデンサの増強などによって推力も強化されたため、機動力は大幅な向上を果たしています。ハルートの大きな特徴はガンダムとしては初の複座式コックピットを採用していることです。アレルヤが機体制御を、マリーが火器管制を主に担当しており、脳量子波による意思疎通を行うことで、常人には為し得ない緊密な連携操縦を可能としています。

二人による操縦が求められた理由の一つには、武装が大幅に増加したことによる操縦の複雑化があります。ティエリアがガンダムマイスターから外れたことにより、ティエリア機が担っていた大火力の役割は他のガンダムに委ねられることになりました。そのためハルートには二門の大型GNキャノンが装備され、両腕に持つGNソードライフルと連動させることで、セラヴィーと同様のクアッドキャノン現象を発生させることも可能です。また、GNミサイルコンテナも基本装備となっており、ハルートの火力はGNHWを装備したアリオスを大きく上回るものとなっています。あるいはこの程度の武装の増加であれば、複数のパイロットを必要とはしなかったかもしれません。ハルートの操縦の難易度を大きく引き上げることとなった最大の要因は、アレルヤ機としては初のビット兵器である「GNシザービット」です。

GNシザービットは2基のGNソードによって鋏を形成し、超高速で突撃することで対象を切断する新型のビット兵器で、ブースターユニットの後部に合計10基が格納されています。CBはヴェーダを通じて連邦軍の兵器開発を把握しており、新たな主力機となったジンクスIVに標準でGNフィールドが搭載されたことを受け、それを突破可能なGNシザービットのような近接戦闘用のビットが開発されたものと見られます。超兵の脳量子波によって直接制御されるためその動作は機敏で、防御手段は限られ、回避・迎撃することも至難であることから、GNシザービットは対MS用としては反則的なまでの攻撃力を持っていると言えます。しかしビットの操作中は脳量子波による警戒が疎かになる恐れがあるため、もう一人のパイロットのサポートが必要と考えられたのでしょう。

真の超兵の能力を前提に開発されたハルートは、アリオス以前の機体とは一線を画する性能を獲得することとなりました。戦いがかつてのレベルであったならば、たとえ操縦するのがアレルヤ1人であったとしても敵は存在しなかったでしょう。しかしトランザムが普及し、イノベイターの驚異的な戦闘能力も明らかとなったことで、「反射と思考の融合」を以ってしても絶対の優位が得られない時代が迫っていることは明らかでした。イノベイターに対抗するためには、超兵としての力を最大限に引き出さなければならない。そのような思いから、新型機が複座式として開発され、マリーとともに乗り込むことが決まった後、アレルヤはイアンに対してあるシステムの構築を依頼することになります。ハルートに実装されたそのシステムを使用するには、アレルヤとマリー、ハレルヤの完璧な意思疎通が不可欠であり、おそらく三人は地上での旅の間にも、そのための訓練を続けていたのではないかと思われます。
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