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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.13

木星の大赤班から出現したELSの大群を迎撃するべく、連邦軍は準備を進めていました。確認されている群れがELSの全てであるならば、総力を挙げれば殲滅することも不可能ではないと、連邦軍も考えていたかもしれません。しかしそれをあざ笑うかのように、木星から新たなELSの大集団が現れたとの知らせが届きます。連邦軍が決戦を期していたELSの集団は先遣隊でしかなかったわけです。さらに連邦政府を凍りつかせることとなったのは、新たに確認された超巨大ELSの存在です。その大きさは直径約3000kmと月に匹敵する規模で、もはや人類が対抗しうる存在ではないことは明らかでした。

いかに楽観主義の人間であっても絶望せざるを得ないような状況で、それでも連邦軍が秩序立った行動を続けることができたのは、ELSの規模と比較すればきわめてささやかながらも、希望となりうる最終兵器が存在したためです。それはCBから接収した「コロニー型外宇宙航行母艦ソレスタルビーイング」に搭載された、超大型GNレーザー砲です。一射で大艦隊をも殲滅しうるこの兵器を効率的に運用することが出来ればELSの殲滅も可能であると、軍は兵士たちに対して大いに喧伝し、その士気の維持に努めたのでしょう。時間に猶予さえあれば、アロウズによる暴虐の象徴である兵器「メメントモリ」の再建造さえも連邦政府は許可したかもしれません。

絶望的な戦いとなることを覚悟しながらも、連邦政府はELSに立ち向かうことを決定しました。しかし中にはそれ以外の手段を主張する者もいたはずです。それはすなわち人類の存続のために地球を脱出するという道です。コロニー型外宇宙航行母艦は地球脱出のための方舟としてふさわしく、ELSが地球に到達するまでの二か月足らず、軍が総力を結集すれば準備も不可能ではなかったでしょう。しかし当然ながら計画を公にすることはできず、ごく限られた人数しか乗船できないことから、公平な方法で選抜することもできません。中核戦力を失った軍にはELSを退ける可能性は万に一つも無く、地球に残された人々は全滅を免れません。そこまでして脱出したとしても、ELSから追撃を受けないという保証はありません。それでもELSと戦い勝利することと比較すれば、地球脱出は合理的な考えであったはずですが、おそらく俎上に載せられることすら無かったでしょう。それは非道であるからというだけではなく、この時代のほとんどの人類にとって未だ世界とは地球がその全てであり、地球なくして人類の存続はありえないと考えるのが当然であったからです。
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