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CB-002 ラファエルガンダム

ELSが発する強力な脳量子波によって操縦を妨げられ、窮地に陥った刹那のダブルオーライザーを救ったのは、新たな肉体とガンダムを得て駆けつけたティエリアでした。ティエリアの新型機「CB-002 ラファエルガンダム」はCBによって開発されたものではなく、巨大艦「ソレスタルビーイング」内に存在する連邦軍には未だ発見されていないファクトリーを利用し、ティエリアが独自に建造した機体です。リボンズによって開発されたGNZシリーズがベースとなっており、型式がイノベイド専用MSとして開発された「CB-001 1ガンダム」に次ぐ番号であるのは、イノベイドとして人類を陰から支え導こうというティエリアの決意の表れなのでしょう。

機体上部にドッキングしているユニットは「GN-008RE セラヴィーガンダムII」が変形した姿です。イノベイドとの戦いで大破したセラヴィーガンダムの改修機とされていますが、機体構造が大きく変化していることから、ほぼ新造と言うべき機体となっています。胸部と両脚部に計3基の擬似GNドライヴを搭載しており、脚部は強大な威力を誇る「GNビッグキャノン」として機能するほか、機体から分離させることで、近接戦闘を行うこともできる大出力のビット兵器「GNビッグクロー」として使用することも可能となっています。ユニット全体をラファエルガンダムから分離し、脳量子波によって制御される無人MSとして運用することも可能ですが、その場合、擬似GNドライヴを搭載していないラファエルガンダム本体の戦闘能力は大きく低下することとなります。そのため、セラヴィーIIをMSとして使用するのは、過去のナドレやセラフィムと同様に、切り札を切らざるを得ない場合に限られるものと考えられます。

擬似GNドライヴを搭載しておらず、GNZシリーズの特徴でもあった両肩の大型GNコンデンサもオミットされているため、ラファエルガンダム単体での出力は低く、攻撃手段も多くはありません。しかしそのラファエルにも大きな特長が一つ存在します。それは機体重量です。セラヴィーIIとドッキングした状態では102.3トンもの重量となるラファエルですが、単体では36.6トンと、ベースとなったGNZシリーズから40%ほども軽量化を果たしています。ティエリアがあえてラファエルにGNドライヴを搭載せず、両肩を小型化し、さらにはセラヴィーIIとのドッキングの妨げとはならないはずのGNバルカンやGNカッターなどの固定武装をもオミットしたのは、おそらく可能な限り機体を軽くするためです。セラヴィーIIと分離して急激に機動力を高めることで、相手の意表を突き翻弄する狙いがあるのでしょう。トランザムも使用すれば、その驚異的な機動力はまさに切り札と言うべきものとなるはずです。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.7

アレルヤ、マリーと合流した刹那とライルはプトレマイオス2へと帰還しました。刹那たちが地上との往復に用いた移動手段は軌道エレベーターと小型艇です。連邦軍に発見されることを避けるためにプトレマイオス2はあまり地球に接近することはできず、小型艇の機動力もそれほど高くはないことから、今回の地上との往復だけでもCBはかなりの時間を費やしたと見られます。この間、プトレマイオス2はガンダムマイスターが不在の状態であったため、連邦軍に発見されるなどの緊急事態が起きた場合には窮地に陥っていたことでしょう。マイスター達が帰還したプトレマイオス2では、謎の金属生命体についての情報を整理するための会議が行われることとなりました。まず語られたのは、刹那が地上で遭遇したリボンズ・アルマークと酷似した存在についてです。

その正体はCBによって乗っ取られた120年前の木星探査計画に参加していた、スカイ・エクリプスという名のイノベイドでした。GNドライヴの開発は探査船エウロパを拠点として行われました。数十年の時間をかけてGNドライヴは完成に至りますが、開発に関わっていたメンバーは突如豹変したある一人の人物によって全員殺害されたとされています。その事件の実行犯こそが、このスカイというイノベイドなのかもしれません。エウロパについて語るフェルトやマイスター達の様子から、彼らはGNドライヴ開発に秘められた惨劇をいまだ知らないようです。ほとんどの機密が解放されたCBにおいても、組織への信頼を著しく損ねかねない暗部に関してはあえて知らされることはないのでしょう。いずれ知る時がきたならば、託されたものの重さをあらためて実感することになるはずです。

目的不明の地球外生命体への対応について話し合うスメラギたちの元へ、ブリッジのミレイナから謎の船が接近しているとの知らせが入ります。解析の結果、その船は連邦軍によって完全に破壊されたはずの木星探査船エウロパでした。事態の異常さから謎の金属生命体が関わっていることを直感した刹那は、ただちにガンダムでの対応を決断します。アレルヤとマリーの新型機「ガンダムハルート」は二人がCBを離れた後に完成したと見られることから、初めての実戦投入となります。二人による同時操縦、ビット兵器などの新たなシステムが導入されていることから、本来であれば十分な慣熟訓練を行うべきところですが、マリーの脳量子波に金属生命体が引きつけられ、プトレマイオス2が狙われることを避けるために出撃することになりました。

3機のガンダムを出撃させたCBに対して、エウロパは様々な形状の無数の金属体を放出してガンダムに襲いかかってきました。CBを驚かせたのは、ハルートから発射されたGNミサイルを金属体が一瞬で取り込み、自らがGNミサイルへと変貌してしまったことです。これは以前のエウロパの軌道を変更するために連邦軍が数多くのGNミサイルを使用し、その特性が完全に学習されてしまっていたためと考えられます。接触することで取り込まれる危険性があることから、近接戦闘を得意とする刹那には相性が悪い相手と言えますが、それ以上に刹那を苦しめることとなったのは、金属体から発せられる強力な脳量子波でした。それは情報量の暴力というべきもので、脳に対する直接の苦痛によって刹那はまともに戦闘を行うことができなくなってしまいます。アレルヤやマリーには苦しむ様子が見られないのは、脳量子波を受信する能力において、純粋種のイノベイターと超兵とでは大きな差があるためなのでしょう。苦痛に耐えながらも機体を操り金属体を回避し続けていた刹那ですが、ついに左腕への浸食を許し、接触されたことでさらに強さを増した苦痛によって行動不能に陥ってしまいます。致命の一撃受けようとしていた刹那を救ったのは、戦場に突如現れた謎のガンダムでした。

謎のガンダムはトランザムを使用した強力なビーム攻撃によって金属体の群れを殲滅し、さらには全長1kmのエウロパに変貌した金属体をも破壊するという強大な攻撃力を見せつけ、戦闘を終結させます。CBの窮地を救ったのは、新たな肉体を得たティエリアと、ティエリアが密かに建造していた「ラファエルガンダム」です。ブリッジのスメラギやミレイナは搭乗しているのが誰であるのかはすぐに察していたようですが、ライルやアレルヤなどは帰投し実際に顔を見るまでは半信半疑といった様子でした。これはCBではティエリアのかつての肉体を丁重に葬っていたためで、肉体は器に過ぎないというイノベイドの在り方は、多くの死を受け止めてきた人間にとっては容易に受け入れることが出来ないとしても無理はありません。謎の金属体「ELS」を攻撃できなかった理由を刹那に問いだしたティエリアは、その答えからELSには高度な知性があると結論づけます。知性があり、その意思疎通の手段が脳量子波であるならば、戦いではなく対話によって事態の解決を図れるかもしれません。イオリア計画の最終段階「異種との対話」は、数世紀ののち、人類自身が外宇宙へと旅立った後に起こるものと予想されていました。しかしELSという地球外生命体が現れたことで、CBは刹那というたった一人のイノベイターに望みをかけ、計画の遂行を迫られることとなったのです。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.6

アレルヤとマリーの回収をライルにまかせる一方で、刹那は人革連領の軍病院に入院中のルイス・ハレヴィの元へと向かいました。連邦が調べたイノベイターとして覚醒する可能性が高い民間人のリストにはルイスの名も記載されており、そのことをCBも把握していたためです。しかし軍の病院は民間と比較すれば警備は厳重で、何かトラブルがあれば軍がすぐに駆けつけ対処するはずです。また、ルイスにとってはCBは憎悪の対象であることに変わりはありません。刹那の姿を目にしたならば、ルイスは再び強い憎しみを呼び起こされるでしょう。そしてアロウズに加担したことで、もはや自分にはCBを憎む資格も無いのだという事実との葛藤にも苦しめられるはずです。それでも刹那がルイスの警護へと向かったのは、沙慈とルイスの未来について、自分には特別な責任があるという想いがあったからでしょう。

軍病院へと到着した刹那が目にしたものは、宇宙服姿の謎の人物に襲われている沙慈とルイスの姿でした。牽制の射撃で宇宙服のバイザーを破壊した刹那は、隠されていた顔に驚かされることなります。それはかつて打倒したはずのリボンズ・アルマークと同一のものでした。刹那はすでにイノベイドという存在を理解しており、リボンズがヴェーダ内で封印されていることも知っています。目の前の存在がリボンズではないことにはすぐに気付いたはずですが、あまりに思いがけない顔との再会に動揺を隠すことが出来なかったようです。警告に全く応じず、頭部に銃弾を受けても動きを止めることのない異常な存在に対して、ついに刹那は爆薬という最終手段を用いざるを得なくなります。場所は軍病院の目の前であり、なぜか周辺一帯は静まり返っているものの、爆破の音が響けばさすがにすぐに人が集まってくるはずです。刹那はすぐに立ち去らねばならなくなりません。刹那の投げつけた粘着性の爆薬によって、宇宙服姿の謎の存在は上半身を完全に吹き飛ばされましたが、飛び散ったものは血肉ではなく金属片であり、残された下半身もしばらく歩行を続けるなど、人間ではないことは明らかでした。ここに至って刹那は、この謎の存在こそが地球に落下したエウロパの破片が変貌したものであることを理解することになります。

謎の存在、ELSが取り込んだ宇宙服の人物は、探査船エウロパに搭乗していたリボンズと同型のイノベイドでした。死亡したのは100年ほど前であり、破壊されたエウロパの中で完全にミイラ化していたはずですが、少なくとも外見上は完全に復元されており、人間としての動きも模倣していました。つまりELSは、接触した物体が未知の文明の産物であってもそれが「壊れている」ということを認識し、壊れる前の状態を高精度に予測して再現することができるのです。きわめて高度な知性と言えますが、それも万能ではありません。ELSは大破した探査船エウロパを修復し、搭載されたコンピューターを再起動させていましたが、そのプログラムや残されていたであろう乗員たちの記録の意味を理解していないからです。それらからELSが人間の文化というものを学び取ることが出来ていたのなら、人類とELSの接触はより穏やかなものとなっていたかもしれません。
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ミーナ・カーマイン

探査船エウロパの破片の解析に参加するべく、連邦の宇宙技術研究所へとやって来たビリーに対して、周囲に憚ることも無く強烈な好意を向ける女性がいました。彼女の名はミーナ・カーマイン、連邦宇宙局に所属する宇宙物理学者です。ビリーがすでにミーナの性格を熟知しているように見えるのは、二人がユニオンの大学時代からの知り合いで、大学院の時代には交際していたこともあるためです。長年スメラギ一筋で、女性に対してきわめて奥手であったビリーが、ミーナのような女性とも親交があったことは意外に思えますが、ビリーが大学院に在籍している時期は、スメラギがAEU軍の戦術予報士となり、エミリオという恋人がいた時期と重なります。その事実を知り傷心に浸っていたビリーを慰めたのがミーナだったのかもしれません。もっとも本格的な交際には至らなかったようで、数年で大学院を終えたと思われるビリーはエイフマン教授と共にフラッグの開発に没頭することとなり、それ以後、再会するまでミーナとは疎遠であったと見られます。かつて交際していた頃のミーナのビリーに対する想いはあるいはそれほど真剣なものではなかったのかもしれません。しかしスメラギとの因縁に決着がつき一皮むけたビリーは、久しぶりに再会したミーナには見違えて魅力的に思えたのでしょう。積極的なアピールが始まることとなり、困惑しながらもビリーもまんざらではないようです。

38歳であるビリーに対して、ミーナの年齢は明らかとはなっていません。ビリーより年下であることは確かであるものの、ビリーと同時期に大学院に在籍していたとされることから、年齢はそれほど離れていないと考えるのが自然です。仮にミーナがスメラギのように17歳で大学を卒業して大学院へと進み、その時ビリーが大学院3年目の25歳であったしても、やはり30歳以上ということになります。しかしミーナについて注目すべきは年齢ではなく、ネーナ・トリニティと酷似しているようにも見えるその容貌でしょう。これはミーナの祖先にはアレハンドロ・コーナーの祖先との繋がりがあり、コーナー家に遺伝子データを提供していたことに起因しています。不完全ながらもイノベイドを生み出す技術をリボンズから手に入れたアレハンドロは、自らの計画に必要なガンダムマイスターとしてトリニティの3人を製造しました。その際、コーナー家に受け継がれていたミーナの祖先の遺伝子データを使用したことで、偶然ながらミーナとよく似たネーナが生まれることとなったのです。コーナー家の祖先が遺伝子データを求めていたということは、コーナー家はCBの計画に介入するべく、GNドライヴのみならずイノベイドについての研究も古くから進めていたということを示唆しています。そしてコーナー家に協力したというミーナの祖先も、CBの存在を知っていた可能性はあるでしょう。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.5

謎の地球外生命体「ELS」の脅威は地球に滞在するCBの関係者にも迫っていました。CBを離れて一年余り、中央アジアでの旅を続けていたアレルヤとマリーは、送電が停止してしまったという太陽光エネルギー受信施設に向かっていました。彼らにその問題が解決できるわけではありませんが、マリーがその脳量子波によって施設から強い気配のようなものを感じていたためです。ハレルヤが復活したことでアレルヤも脳量子波を取り戻していますが、マリーの言う気配を察知することができていないのは、マリーの方が強い脳量子波を持つためです。超兵としての完成度はアレルヤの方が上であるものの、脳量子波の強さという点ではマリーの方が上であるようです。これは元々そうであったとも考えられますが、頭部を負傷したことでアレルヤの能力が以前より低下している、あるいはマリーとソーマの人格が統合されたことでマリーの能力が高まったという可能性もあるでしょう。イノベイターとしての変革が始まっているという可能性も除外できません。

太陽光エネルギー受信施設に辿りついた二人は、送電が停止してしまった原因を一目で理解します。巨大な変電設備が完全に消失してしまっていたのです。ELSの出現という緊急事態を受けて、プトレマイオス2はアレルヤと連絡をとろうとしましたが、通信ができない状態となっていました。これはこの受信施設が地域における宇宙との通信をも担っていたためかもしれません。施設の異変はELSによるものであり、強い脳量子波を持つ二人は執拗に追跡されることとなります。ELSが車両やヘリなどと融合していたのは、内蔵されているバッテリーからエネルギーを摂取するためです。驚くべきはその学習能力の高さで、車両と融合したELSは地上を走行し、ヘリは飛行をしていたことからも、ELSは融合した物体が持つ機能を容易に理解し、その働きを模倣してしまえるということがわかります。一方で人間については模倣することを果たせていません。これはELSにとっても人間の知性、意識というものは理解しがたいものであるためで、沙慈とルイスの元に現れたELSがリボンズタイプのイノベイドを模倣することが出来ていたのは、基となったものが完全な死体であったからです。

肉体の主導権をアレルヤから借り受けたハレルヤは、自らの脳量子波でELSを引きつけて施設の中を縦横無尽に逃げ回りますが、ヘリと融合した個体までもが現れたことで、ついに追い詰められてしまいます。その窮地を救ったのはライルが搭乗するガンダムデュナメスでした。通信は不能であったものの、二人の位置情報については監視衛星によってリアルタイムでトレースされていたのでしょう。到着したライルが速やかにELSの排除を行えたのも、ヴェーダを通じて現地の映像を確認し、二人が置かれた状況をすでに把握していたためと考えられます。アレルヤとマリーはCBへと復帰することとなり、二人の旅路は期せずして終わりを告げることになりました。スメラギとしては可能ならば二人を呼び戻すことなく、このままCBから解放したいと思っていたかもしれません。しかしこれまでの二人の人生を思えば、戦いから離れ、ただ互いを想い合うこの旅は、スメラギが想像する以上に満ち足りたものであったはずです。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.4

ガデラーザによって破壊された探査船エウロパの破片は地球へと落下していきました。その大きさからほとんどが大気圏で燃え尽きるものと予測されていたものの、かなりの数が地上へと到達したことが明らかとなり、連邦政府は被害の調査のために軍を派遣することとなります。調査に当たった軍を困惑させたのは、落下地点と見られる場所の多くで破片を発見することができなかったことです。わずかながら回収された破片の解析のために軍の技術研究所へと派遣されたビリー・カタギリは、何らかの方法によって破片が自ら移動したのではないかと推測します。その荒唐無稽ともいえる考えに根拠を与えることとなったのは、破片の落下地点の周辺地域では不可解な事故がほぼ同時期に発生していたという事実です。原因不明の事故は、軍の調査隊でも発生していました。

宇宙物理学者であるミーナは、破片の行動原理についての自らの推論を証明するための材料として、連邦政府が極秘に収集していたあるデータの提供をビリーに求めます。そのデータとは、イノベイターとして覚醒する可能性が高いとされる、強い脳量子波を持つ市民のリストです。ヴェーダからイノベイターという概念を知らされた連邦政府は、その真偽を確かめるため、そしてイノベイターが増加した社会への対応をいち早く研究しておくために、脳量子波を手掛かりにイノベイター因子の強い人間たちの調査を進めていたのです。その役割を担ったのは、普通の人間として社会に溶け込んでいるイノベイド達でしょう。彼らがアンテナとなって無意識に強い脳量子波を発している人間を発見し、ヴェーダを介して連邦政府へと情報を提供しているものと思われます。回収された破片が微弱ながら脳量子波を発していることに気付いたミーナは、同じように脳量子波を発するイノベイター因子を持つ人間に引かれているのではないかと考えたのです。

ミーナの仮説はアーミア・リーという少女が無残な姿で発見されたことで証明されることとなりました。人革連領に住むアーミアが学校から帰宅すると、家はエウロパの破片と同質の金属によって浸食されており、接触した彼女もまた肉体の半分が金属へと変貌させられてしまったのです。アーミアは強いイノベイター因子を持つ者として連邦政府のリストに記載されていました。待ち伏せをするかようにアーミアの家が浸食されていたのは、在宅していた彼女の家族もまた強いイノベイター因子を持っており、すでに取り込まれてしまった後だったからかもしれません。アーミアの例だけを以って破片が脳量子波に引かれる性質を持つと断定したとは考えにくいことから、同様の被害を受けたイノベイター因子保持者が他にも幾人かいたものと思われます。エウロパを構成していた謎の金属は「生物・非生物を問わずに浸食し、増殖する能力をもつ地球外生命体」であると結論付けた連邦政府は、彼らを「Extraterrestrial Livingmetal Shapeshifter (地球外変異性金属体)」と呼称し、人類にとっての大いなる脅威としてその対策を迫られていくことになりました。
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GNX-803T ジンクスIV

政治的な事情により「GNX-704T アヘッド」の退役が決定したことで、連邦軍では次期主力MSの見直しを迫られることになりました。しかし全くのゼロベースから新型機を開発することは、時間や予算の面からも今の連邦軍にとっては困難でした。そこで軍は、アヘッドのデータをフィードバックすることでジンクスに大幅なアップグレードを施し、次期主力機として充てることを決定します。新世代ジンクス「GNX-803T ジンクスIV」のベースとなったのは、イノベイドによって開発されていた「GNX-612T/AA スペルビアジンクス」です。スペルビアジンクスからは新型センサーが搭載された頭部のほか、胸部のクラビカルアンテナ、腰のGNバルカンユニットなどがほぼそのままの形で引き継がれています。アヘッドから引き継がれた要素は主に推進器で、両肩と腰背部には大型のスラスターが設置され、機動力、運動性の向上が図られています。

ジンクスIVではジンクスIIで採用されていた両肩側面のハードポイントが復活しており、GNフィールド発生装置を内蔵した大型GNシールドを装着することで、機体全体を覆えるほどの広範囲のGNフィールドを展開することが可能となっています。このGNシールドには「GNZ-005 ガラッゾ」の技術が用いられていると見られ、ジンクスIVの肩が大型化しているのは、GNフィールドの粒子消費に対応するためにGNZシリーズと同様に大型GNコンデンサを内蔵しているためと考えられます。ジンクスIVにおいて防御力が特に重視されているのは、長い戦乱によってパイロットが減少したことで、その生残性の向上が求められているためです。同じ目的から、連邦軍ではイノベイドから入手したコアファイターシステムの研究も行われています。

改良型擬似GNドライヴを搭載し、トランザムシステムが実装され、システム面ではヴェーダのバックアップを得たことで、ジンクスIVは量産機ながらCBのガンダムに匹敵する高い性能を獲得しました。既存のジンクスIIIからのアップグレードが容易であることから、宇宙の部隊を中心にジンクスIVへの機種転換は速やかに進められていくこととなりましたが、パイロットの多くはそのあまりに高い性能に戸惑うこととなったはずです。ガンダムがその威力を発揮できるのはガンダムマイスターの高い操縦技能があればこそであり、誰もがその領域に至れるわけではありません。並のパイロットではトランザムでの戦闘機動が行えるようになるまでに相当な訓練期間が必要となるでしょう。2314年時の地球連邦軍においては、飛躍的に進歩したハードウェアの性能と、それを扱う人間の能力の不均衡が大きな問題となっていたであろうことは想像に難くありません。
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GNMA-Y0002V ガデラーザ

イノベイドからもたらされた数々の新技術は、連邦の兵器開発者たちを大いに刺激することとなりました。彼らの探究心が赴くままに、現時点で盛り込むことが可能なあらゆる機能が搭載された結果、「GNMA-Y0002V ガデラーザ」は全長302mという規格外の超大型MAとして完成することとなります。ガデラーザの最大の特徴は、連邦軍としては初めてのイノベイター専用機であることです。そしてそれは、軍縮が求められている情勢下でガデラーザのような超ハイコストの新型機の開発が許された理由でもあります。CBの武力介入に端を発した長い戦乱では多くの優秀なMSパイロットが戦死し、連邦軍は人材不足に悩まされています。そのため、たった一人で大部隊に相当する働きができるとされるイノベイターの能力に期待が集まることとなったのです。

果たして完成したガデラーザの性能は、連邦軍の期待以上のものとなりました。プトレマイオス2よりも巨大でありながらその機動力はすさまじく、劇中では先発したジンクス部隊を置き去りにし、標的である探査船エウロパへと短時間で到達していました。巨大な機体にMSを越えるほどの機動力を与えることを可能としているのは、ガデラーザの後部に設置されている柱のような形状の2基の推進器です。これは超大型の新式コーン型スラスターで、直列に配置された3基の擬似GNドライヴをそれぞれに内蔵し、膨大な推力を生み出しています。機体全長の半分ほどを占める長大な砲身のGNブラスターは、全長1kmのエウロパを完全に破壊するほどの威力を発揮しました。トランザムを起動して使用したならば、CBが拠点としている数km級の小惑星であっても破壊することが可能かもしれません。

ガデラーザの攻撃力の根幹を担っているのが、左右のコンテナに格納されている14基の大型GNファングです。この大型GNファングはMSの胴体ほどの大きさで、独自に擬似GNドライヴを搭載しているため、従来のビット兵器とは比較にならないほどの長時間の稼働が可能となっています。さらに大型GNファングには小型GNファングが10基ずつ搭載されており、ガデラーザは最大で154基のGNファングを同時展開することが可能です。CBの新型機「ガンダムサバーニャ」が数十基のビットを制御するために2体のハロを必要とするのに対し、ガデラーザが154基ものGNファングを制御できるのは、イノベイターの脳量子波による直接制御が行われているためです。ガデラーザと小型ファングを中継する役割を持つ大型GNファングを操ることは、MS1機を操縦することに等しいとされています。それはつまり、イノベイターの能力を以ってすれば十数機のMSを一人で操縦することも難しくはないということを意味しています。

圧倒的な性能を見せつけ、イノベイターの有用性を証明する上で大きな役割を果たしたガデラーザですが、あくまで実験機であるため、このサイズと性能のままに制式採用されるということは考えにくいところです。宇宙世紀の機体で例えるならば、ガンダム試作3号機デンドロビウムを量産するようなものと言えるでしょう。いかに高い性能を持つとはいえ、建造や運用、新規の施設整備にかかるコストの高さを度外視することは、今の連邦政府にとっては現実的ではありません。また、艦船を伴った作戦行動であるならば、イノベイターが搭乗する本体に多数の大型無人機を格納する必然性も高いとは言えません。40m級のレグナントの系譜でありながら、開発者たちの欲深さによってガデラーザは全長300mという異形のMAと化してしまいました。しかし制式採用された場合には、機能の取捨選択が行われることでより小型の機体として生まれ変わっているかもしれません。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.3

純粋種のイノベイター、デカルト・シャーマンと面会していたマネキンのもとへ、ある任務に当たっていた連邦艦隊から通信が届きます。その任務とは、約130年前に木星へと旅立ち消息を絶った探査船が、原因は不明ながら地球圏へと飛来し、地球への落下コースを辿っているためにその軌道を変えるというものです。破壊ではなく軌道変更を目的としているのは、探査船が全長1kmとあまりに巨大で、並の火力では完全に破壊することが困難であるためです。その探査船とは、かつてCBがGNドライヴ建造のための拠点として利用し、ドライヴ完成後に機密を守るために破壊した「エウロパ」のことです。木星探査の失敗は当時大きな事件として報じられており、公開された画像はCBによって捏造されたものではあったものの、船体中央が破断し折れ曲がったエウロパの無惨な姿は一般にもよく知られていました。その船が復元され、地球への帰還を果たすなどというのはありえない事案であるわけですが、連邦政府としてはとりあえず調査は後回しにし、危機の回避を優先することにしたようです。過去のエウロパの資料からその巨大な質量を動かすために必要なエネルギーが計算され、艦隊から放たれた大量の大型GNミサイルによる爆圧がエウロパに叩きつけられました。ことは単純な物理の問題であり、失敗するはずのない作業でしたが、結果を観測した艦隊から送られてきたデータにマネキンは愕然とします。GNミサイルによる攻撃はエウロパの軌道をほとんど変えることができていなかったのです。

この失敗をただひとりデカルトだけは予知していました。彼はその高い脳量子波能力によって、エウロパから発せられる何らかの強い意志のようなもの感じ取っていたのかもしれません。そしてマネキンに対し、自らが新型機で出撃してエウロパの処理を行うと宣言します。今回の視察ではイノベイターのために開発された新型機の性能も確かめるつもりであったこと、そしてミサイル攻撃の失敗を知った次の瞬間には、これは新型機を出撃させる良い機会ではないか考えていたマネキンにとっては、デカルトの発言はまさに心を読まれたも同然でした。人は誰もが微弱ながら脳量子波の発信、受信を無自覚に行っており、イノベイターであるデカルトはごく近くにいる人間の脳量子波であれば読み取ることが出来てしまうのです。当然ながらそれは他者の秘められた悪意をも知ってしまうということであり、デカルトにとっては大きなストレスの原因ともなっていました。同じイノベイターである刹那も、覚醒後は以前にも増して寡黙となったと言われています。ライルはこの態度を鈍感と評していましたが、むしろ他者の想いに敏感でありすぎるが故に、必要以上に語ることに意義を見出すことが出来ないだけなのかもしれません。

超巨大MA「ガデラーザ」で出撃したデカルトは、その強大な機動力によって先行していた新型ジンクス部隊を置きざりにし、地球に迫っていたエウロパへの攻撃を開始します。艦隊が行った三度のGNミサイル攻撃にもビクともしなかったエウロパでしたが、ガデラーザから発進した多数のGNファングによって瞬く間に細分化され、とどめとして放たれたGNブラスターで完全に破壊されました。その攻撃力の高さには同じくエウロパを追跡していたアンドレイも驚きを隠せず、マネキンもイノベイターのMSパイロットとしての有用性を認めざるを得ませんでした。しかし同時に、これだけの強大な戦力をたった一人の兵士に預けることへの警戒心もマネキンは抱いたのでしょう。技術士官に対し、実験動物のようなデカルトの扱いを改善するように釘を刺します。もし軍とデカルトの関係がいま以上に悪化し、ガデラーザをもって反乱を起こすような事態に至ったならば、連邦軍には対応できる戦力が無いためです。ガデラーザによって破壊されたエウロパの断片は大気圏へと落下していきました。断熱圧縮による超高温で燃え尽きると考えられたためですが、そもそも綿密に計算されたGNミサイルによる軌道変更が失敗に終わったことを思えば、それは甘い予測であったと言わざるを得ないでしょう。
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劇場版 機動戦士ガンダム00 Part.2

CBが建造したコロニー型外宇宙航行母艦「ソレスタルビーイング」を接収した連邦軍は、ヴェーダとの協力関係を築き、艦の調査、拠点化の作業を進めていました。しかし戦いから2年を経た現在でも艦内部の把握率は7割程度であると、視察に訪れたカティ・マネキンに対して責任者である技術士官は語ります。もっとも、艦の調査が本格的に始まったのは、戦後の混乱が収拾され、新たな連邦政府がヴェーダの扱いについて決定を下した後のはずです。実際に調査に費やされた時間は未だ1年足らずであるかもしれません。調査に協力しているイノベイド達が、意図的に作業を遅らせている可能性も考えられます。未だ明らかとなっていないエリアには、ティエリアが新たに建造したガンダムが保管されているファクトリー、そしてイノベイド生成施設が存在します。ティエリアがヴェーダの中で眠りにつき、アレルヤが地球へと旅立ったことで、今のプトレマイオス2にはガンダムマイスターが2名しかいません。また、刹那の新たなガンダム「ダブルオークアンタ」も完成には程遠く、再び大きな紛争が起きたならば対応しきれないかもしれません。そのため、いずれは発見されてしまうにせよ、CBの戦力が整うまでは施設を隠匿し、緊急時にはティエリアが出撃可能な環境を維持する必要があるのです。

「ソレスタルビーイング」を訪れたマネキンには、艦の視察以外にもう一つの目的がありました。それはヴェーダによって初めて存在が確認された純粋種のイノベイターに会うことでした。イオリア計画の詳細とともに、進化した人類であるイノベイターの存在をヴェーダから知らされた連邦政府は、本当にそのような人間が発生しているのかを確かめるために調査を行いました。対象となったのは軍人たちです。連邦政府としては今の段階でイノベイターの存在を一般社会に知られるわけにはいかず、監視が容易で機密の保持を強いることができる彼らが適役だったのです。その結果、デカルト・シャーマンというMSパイロットの特異なデータが浮かび上がり、検証の末にヴェーダによって純粋種のイノベイターであると認定されました。彼はCBとの決戦にも参加した元アロウズの隊員で、トランザムバーストの影響を受けたことが覚醒のきっかけになったと見られます。アロウズ除隊後、降格処分を受けた上で連邦軍に復帰していたデカルトですが、イノベイターと認められたことで「ソレスタルビーイング」内に創設された研究機関に「大尉待遇」で迎え入れられることになります。しかしそこで彼を待っていたのはあからさまな実験動物扱いでした。マネキンの苦言によってその研究体制は正されることになったものの、イノベイターについての研究は第二の超人機関を生む危険性を孕んでいることは明らかと言えます。
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