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GNT-0000 ダブルオークアンタ

ツインドライヴシステムを搭載し、アロウズ・イノベイドとの戦いでは圧倒的な戦闘能力を発揮したダブルオーガンダムですが、その完成度は必ずしも高いものとは言えませんでした。ツインドライヴを安定稼働させるためにはオーライザーのような外部制御装置を必要とする上、真の性能を発揮したツインドライヴの粒子生産量には対応することが出来ず、生み出された粒子の大半は無為に放出せざるを得ませんでした。また、ダブルオーは量子化などという現象は全く想定されずに開発された機体であり、たとえ新たなツインドライヴが完成したとしても、安全上の理由からツインドライヴを搭載して運用することは望ましくありません。さらに真のイノベイターとして変革を果たした刹那の能力は既存の機体では活かしきることが出来ないと判断されたこともあり、CBは刹那のための新たなガンダムの開発を決断することになります。基本となるフレームはダブルオーの時点で十分な完成度に至っていたこともあり、他の新世代ガンダムには後れを取りながらも開発は順調に進み、約二年の期間を経て、CBとしては初めてのイノベイター専用機「GNT-0000 ダブルオークアンタ」はロールアウトすることになりました。

ダブルオークアンタに搭載された2基の新たなGNドライヴはツインドライヴ専用として開発されたものであり、外部の制御装置に依ることなく完全な同調を果たしています。そのため、ダブルオーライザーでは75.1トンにまで増大していた機体重量は、クアンタでは63.5トンと大幅に軽減されることとなりました。ダブルオーではコーン型スラスターに覆われて両肩部に位置していたGNドライヴは、クアンタでは胸部と左肩のGNシールド内部に搭載され、コーン型スラスターは廃止されています。コーン型スラスターが採用されなかった理由としては、粒子放出量のさらなる増大によって物理的なスラスターではもはや処理が困難であること、粒子制御技術の進歩によってGNフィールドを応用した非実体型のスラスターが実用化に至ったことなどが考えられます。また、クアンタにおける新たな試みの一つ「2基のGNドライヴの直結稼働」の妨げとなってしまうということも理由の一つでしょう。

2基のGNドライヴを直結させることにより、ツインドライヴは粒子生産量とその純度をさらに高められるであろうと予測されました。そのため、クアンタは必要に応じてGNシールドを背部に移動させ、2基のGNドライヴを接続できる構造となっています。直結させない状態が基本となっているのは、イノベイターの脳量子波と連動し、直結した状態のツインドライヴの性能が未知数であるためです。運用を重ね、常時直結させた状態でも安全であるということが確認された場合には、GNシールドに内蔵されたGNドライヴは背部へと移設される予定であったかもしれません。ツインドライブの粒子量は直結させずとも消費しきれないほどに膨大であり、粒子の純度は攻撃力には影響を及ぼしません。つまりCBが直結式のツインドライヴに期待したものは兵器としての性能が主ではなく、刹那が示した紛争への新たな介入手段「トランザムバースト」の効果をより高めることにありました。

ツインドライヴを構成する2基のGNドライヴを直結させ、刹那の脳量子波と連動することで形成される意識共有領域は、ダブルオーライザーによるトランザムバーストをはるかに上回る意識共有を可能とするとされ、新たに「クアンタムバースト」と名づけられています。劇中では超巨大ELSの中枢において使用され、その際クアンタは全身の装甲の多くをパージし、内蔵されたGNコンデンサを露出させることで粒子放出効率を最大限にまで高めていました。これはクアンタムバーストの効果を最大限まで高める方法ではあるものの、使用後の性能低下などのリスクは大きく、もはや後が無いELSとの戦いであったからこそ用いられました。装甲をパージせず、部分開放することでもクアンタムバーストを行うことは可能で、通常の武力介入においてはおそらくこちらの方法が用いられるのでしょう。

対話を果たすため、銀河のいずこかに存在するELSの本星へ向かうこととなった刹那とティエリアは、ダブルオークアンタに搭載された新たな能力「量子ジャンプ」を実行しました。これはダブルオーライザーにおいて半ば事故のような形で発現していた量子化現象を解析し、任意に使用できるようにしたもので、6基のGNソードビットによってGN粒子を超高密度に圧縮し、形成されたゲートにクアンタが飛び込むという形で行われます。ごく近い距離の移動しか行えなかった量子化に対し、量子ジャンプは目的の座標さえ把握できていればその距離はほぼ無制限であり、超巨大ELSとの意識共有によってELS本星の場所を知った刹那は、一瞬にして宇宙の彼方へとたどり着いたはずです。しかしこの量子ジャンプはイノベイターの能力があればこその機能であり、量子化についてもツインドライヴが存在しない時期においては実際に検証することは不可能でした。そのような状況で開発された量子ジャンプの信頼性は高いとは言えず、おそらくクアンタのロールアウト後、長い試験期間を経て実用化されるものであったはずです。脳量子波によってGNドライヴとリンクしている刹那には量子ジャンプが成功するという確信があったものと思われますが、その開発過程を見る限り、客観的にはきわめて危険な賭けであったことは間違いありません。
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